「浮雲校長、アラセが行く!」

ひげダンスとグレープフルーツ

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2007年7月5日(木)

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 6月下旬の夕方、正門横の屋外ステージに生徒が集まっていた。何をしているのかなと思って見ていると、縄跳び。2人が持った2本のロープを交互に回して、中に数人が入って跳んでいる。思い通りにいかないらしく、動いては止め、打ち合わせをしてまた始め、といった具合で続けていた。ふーん、高校生も縄跳びをするのか…。

 先日、取材があって、文化祭の話になった。「堀川高校は土日にやって、一般参加も認めていると聞きましたが、問題とか起きないんですか」。

 「うーん、当日については特に問題はないですね。ただ、準備に2カ月もかけるので、そっちは少し心配しています。ここのところ7月になると、まず3年生が動き出すんですよ。そして2年生。1年生はもうひとつ呑み込んでいないから、いちばん後になります。まあ3年生は受験のこともありますから、最後の夏は勉強しないといけないんですがね」

 すると、傍らにいた教頭が言った。「すみません。報告していませんでした。実はこないだから3年生が準備を始めています。記録更新です」。

 そうだったのか。あの屋外ステージは単に縄跳びを楽しんでいたのではなく、文化祭の準備だったのか。

 生徒が企画して取り組む最大の行事が文化祭である。堀川の文化祭はずっと以前からなかなか盛り上がるものだったが、近年それがどんどんエスカレートしている。校内のあっちこっちで催しがあるが、講堂の1、2年生のクラス演劇、アリーナのバンド演奏、アトリウムで行われる3年生のパフォーマンスと毎年文化祭の最後を飾る吹奏楽部のコンサートに多くの客が集まる。

 アトリウムとは北館と南館をつなぐ幅広の廊下のことで、堀川高校の中心だ。かつては卒業生である葉加瀬太郎さんのコンサートを開いたこともある。 自習室では、PTAが開く「わいわいサロン」という無料の喫茶とゲームコーナー。こちらも大入り満員になる。

 文化祭は会場ごとに進行するから、プログラムを見て何時から講堂、次にはアトリウム、そのあと小ホールに行って、また講堂に戻って、と見たいもの、聞きたいものをチェックしておくことが必要になる。模擬店にも行かないといけないし、お化け屋敷や教室での展示もあるから、すべてに顔を出すのは本当に大変だ。やる方も同様。前評判がよくないと集客できないから、宣伝班をつくったりもする。

いよいよパイを投げられるのか…?

 3年生は、クラスのパフォーマンス以外に有志で何かやる生徒が出てくる。去年のそれは、ひげダンスだった。音楽に合わせて無言で踊りながら芸をして、失敗すると生クリームのパイを顔に投げられる、という出し物だ。アトリウムでは3年生のほかに生徒会の企画や邦楽部の演奏もある。その合間に、突然音楽が始まって大きなひげをつけた6人組が登場する。会場から参加者が引っ張り出されて、投げられたグレープフルーツやピーマンをフォークで刺す。うまくいけばよし、失敗したら顔にパイだ。

 文化祭の前に、このメンバーがやってきた。私にも出演してほしいからこの時間帯に会場にいてほしい、ということだった。「失敗したら、私もパイの洗礼を受けるのか。まあ好きにしてください」。生徒たちは笑っていた。

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著者プロフィール

荒瀬 克己(あらせ・かつみ)

荒瀬 克己

京都市立堀川高校校長。1953年、京都府生まれ。京都教育大学卒業後、京都市立伏見工業高校国語科教諭、京都市教育委員会指導主事などを経て、98年堀川高校教頭に、2003年に校長に就任。国公立大学合格者を一挙に増やしたことから「堀川の奇跡」と呼ばれる学校改革を実現。中央教育審議会初等中等教育分科会委員、同教育課程部会委員。著書に『奇跡と呼ばれた学校』(朝日新書)。



このコラムについて

浮雲校長、アラセが行く!

国を挙げた教育改革が進められている。日本の教育は今、どこへ向かおうとしているのか。「堀川の奇跡」で知られる京都市立堀川高校の荒瀬克己校長が、教育現場で行われていること、教師たちのチャレンジ、成長する生徒たちの様子などを、学校教育の最前線からお届けする。日本の将来を左右するのは、教育に他ならない。浮雲のように自由に漂う荒瀬校長が校長室を飛び出し、日本をより良くする教育のあり方を模索する。

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