超自然的なことを、どれだけ信じますか?
今、巷では、占いや霊視など、いわゆるスピリチュアルな話題がとても流行しています。テレビでも、江原啓之さんや、細木数子さんなどが登場する、この手の番組が高視聴率を叩き出していることは、今さら言うまでもないでしょう。
このスピリチュアルな話題を特に好む世代がいます。40代の女性たちです。博報堂生活総合研究所が2006年に実施した「生活定点」調査では、40代女性の関心が超自然的な話題に向いていることを示すデータが出ています。

図1 見えないものを信じて
「来世」や「超能力」を信じると答えた40代女性の割合は、この10年で増加傾向にある。出所:博報堂生活総合研究所「生活定点2006」。同調査は1986年から隔年で実施しており、今回(2006年)は首都圏と阪神圏の合計3293人に、日本人の様々な意識、価値観、ライフスタイルなどの変遷を調査している。以下のグラフも出所は同じ
例えば、「霊魂を信じる」「来世を信じる」と回答する40代女性は、いずれも半数近くに達しており、女性全体の割合よりも10ポイント近く高い結果になりました。「来世を信じる」「超能力を信じる」という回答は、10年前の40代女性に比べても格段に増えています(図1)。10年前には3割に満たなかった40代女性の「来世を信じる」という回答は、実に今回は48.3%に達しているのです。「超能力」については「来世」ほどではないですが、それでも10年前よりほぼ10ポイント増加しています。
超自然的な話題に魅かれる40代女性が急増している理由は、もちろんテレビ番組をはじめ、最近のメディアで多く取り上げられるようになったということもあるでしょう。でも、それだけではなさそうです。ユリ・ゲラー以来、超自然的なもののブームは、わいては消えを繰り返していますが、40代女性は、10年前に同じ年代だった女性たちよりも「見えないもの」を信じるようになっています。一方、ほかの調査結果から見えてくるのは、40代という人生の折り返し地点を迎えて、今後の人生についてあれこれ揺れている40代女性の姿。私は、こうした40代女性を「踊り場女」と呼んでいます。
いつまでこの疲れた生活をするんだろう…
今の40代女性は、20代の頃に「新人類」「ハナコ世代」と呼ばれ、消費の舞台で常に注目され続けてきた華やかな世代。新入社員として、バブル期の消費の楽しさを十分に満喫した人たちです。バブル崩壊後も事あるごとに彼女たちの消費や生活スタイルは関心を呼んできました。仕事でも、男女雇用機会均等法の施行後に入社し、専業主婦文化を打ち破り、日本の働く女性像を創ってきた先駆者たちと言えるでしょう。

図2 仕事に揺れる
40代女性の回答。働くことに疲れた女性の姿が浮かぶ
でも、最近の調査結果を見ると何だか元気がありません。例えば、労働意欲。「通信技術などが発達して、在宅勤務ができるとうれしい」「パート、アルバイトとして働きたい」と答える40代女性は、他年代の女性より多くなっています。正社員ではなく、パート、アルバイトになりたいと考える40代女性は、女性全体から見ても10ポイント高い、42.7%にまで増えました。
「休息・静養の時間を増やしたい」「日頃、睡眠不足を感じている」と回答する40代女性も急増中(図2)。「今まで頑張って働いてきたけど、もう少し楽な働き方をしたいなあ…」「いつまでこの疲れた生活をするんだろう…」と、数字からは何だか生きることに疲れた働く女性の姿が浮かびます。
なぜでしょうか。いくつかの理由が考えられますが、いろいろな40代女性にヒアリングを重ねると、こんな背景が見えてきます。「キャリアウーマンの時代」「働く女性の時代」などと持ち上げられて頑張ってきたものの、バブル崩壊後の不況で多くの企業で管理ポストが削減され、バブル期の売り手市場で楽に就職できた分、今は一番きつい立場に追いやられている ―― 40代女性は、今の仕事に疑問を持ち、仕事をする自分に揺れ始めているのです。
格差も広がり、国が成熟し、社会不安も増大し、そんな時代だからこそ広がってる動きかもしれません。景気回復が進めば少しずつ下火になるかもしれませんね。(2007/07/16)