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ケチな改革が教育をダメにする 【後編】

  • 広田 照幸, 斎藤 哲也

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2007年7月6日(金)

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【特命助手サイトーの前説】

 前回の記事には予想以上の反響をいただきありがとうございました。広田先生ともどもビックリしています。先生は、これまでネットでの発言は控えていたので、読者の皆様からの反応の速さにも驚かれたようです。

 頂戴したコメントは、もちろんすべて拝読しております。現役の先生方の声がとても多かったのが印象的でした。また、反対意見や疑問を戴いたコメントもとても勉強になります。印刷したコメントに蛍光ペンを引きながら、「ここはもっと掘り下げて説明したほうがいいな」「この反論は面白い。広田先生はどう考えるかな」などと助手は考えております。統計資料では得られない「生の声」に触れられたことは、大きな収穫でした。

 一つひとつのコメントにお答えすることはできませんが、皆様からいただいたテーマ、論点、疑問点は、連載を通じて、さらに考えを深めていく所存です。

 1点だけ事実関係の補足をしておきます。「対GDP教育費負担について本文中の資料を見て疑問に思ったのは、これは各国の全体としての数値なのか、それとも子供1人当たりの数値なのか」というご質問がありました。これは初等教育から高等教育まですべて含めた全体額の比率です。学生・生徒1人当たり学校教育費など、より詳細なデータは、文部科学省が作成した「教育指標の国際比較」(平成18年版)をご参照ください。

 さて、前回は、現場の教師から、子供とじっくり向き合う時間が奪われているというお話でした。対処法は「ヒモつきでない金と人を増やすこと」。この問題意識を引き継ぎながら、今回は、教師の多忙化をもたらした歴史的な背景、この問題に対する教育再生会議のスタンスなど、より具体的な議論を展開しています。

 前回同様、皆様からのコメントをお待ちしております。

 前回、最後に申し上げましたが、現代的な意味での「教員の多忙化」には、歴史的な背景があります。教育がメディアで騒がれるたびに、また、上からの改革が行われるたびに、学校や教員に期待される役割が膨らみ、教員の仕事が水ぶくれしてきたのです。

なぜ先生はこんなに忙しくなったのか?

 学校内で起こったミクロな問題が、世間の注目を集めるようになってきたのは1970年代頃からでした。管理教育とか、体罰とか、校内暴力といったトピックです。「教育荒廃」という語がしきりに言われるようになったのは、その頃からです。この頃は、学校の隠蔽体質や非常識な慣行が批判されることが多かったように思います。

 しかし1980年代頃からは、「学校の管理責任」とか「学校の改善努力」が注目されるようになりました。耳目をひく青少年犯罪やいじめ事件などのたびに、「学校は何をやっていたんだ?」とメディアに叩かれ、類似事件の続発を恐れた教育委員会や学校は、「とにかく何か改善努力を見せていかないといけない」とやっきになるようになりました。

 同時に、一人ひとりの子どものニーズに合わせた教育が、求められるようにもなりました。日本の学校は長い間、「学級」という集団を教員がコントロールする形で、学校内の関係が作られてきていました。

 ところが、80年代にせり上がってきたのは、ひとつは個別のケアという新しいコントロールの発想でした。不登校者への対応などがそれです。もうひとつは、生徒の個別の好みや選択の重視でした。

 80年代に盛り上がった、市民運動的な学校批判(制服批判とか校則批判など)と、ネオリベラル的な立場からの「画一教育批判」(たとえば臨時教育審議会(1984~87)で出された個性重視論、など)とは、ある意味で、コインの裏表のような関係でした。子どもたちをひとまとまりの「集団」として処遇していくという、それまでの指導の基本形態が、左右の両側から批判されたわけです。

「あれも、これも、学校にやらせよう」

 90年代になると、生徒の個別の評価の厳密化(関心・意欲・態度の評価)に加えて、親たちの個別のニーズへの対応を迫られるようになりました。

教員として教科指導以外にやっていること(回答累計)

以下の18項目から該当する回答を累計して比較した。

  • 「しつけをする」
  • 「集団生活で思いやりの心を育てる」
  • 「健康に関する教育」
  • 「食習慣に関する指導」
  • 「キャリア教育」
  • 「進路指導」
  • 「休み時間などに子どもと遊ぶ・過ごす」
  • 「放課後などに補習をする」
  • 「部活動やクラブ活動に関する指導」
  • 「児童会・生徒会などの活動指導」
  • 「学校行事に関する指導」
  • 「体験活動に関する指導」
  • 「奉仕活動に関する指導」
  • 「児童生徒の安全に関する指導」
  • 「教育方針や行事予定などの情報提供」
  • 「保護者との電話連絡・保護者会など」
  • 「地域行事への参加」
  • 「PTA活動」

 たとえば「心の教育」とか「生きる力」というふうに、旧来の定義での学力以外の教育目標が、意味もはっきりさせないまま、学校現場に降ってきて、「あれも教えよ。これも伸ばせ」という事態になってきました。「学社連携」とか「学校評議員制」の導入など、地域との連携づくり、情報発信なども求められるようになりました。教育目標の多面化と、学校・教員の活動の多次元化と呼ぶべき事態が進行したわけです。

 さらに90年代末から現在までは、「ティーチングの個別化・細分化」という事態が進行しています。

 習熟度別の学級編成や科目の選択制が中学校などでも導入され、少人数授業の編成が進む。学校選択制が広がると、他ではやっていないことを探し出して、自校の「売り物」「目玉」を無理矢理にでも作っていくようなことも始まる。学校種別も多様化し、「ともかく新しいことをやれ」というふうになる。

 つまり、この30年間、学校の仕事は多方面へふくらみ、教員のやるべき仕事は、「あれも、これも」というふうに拡大してきたのです。右上の図は、教科指導以外の業務を国際比較したものですが、選択肢として掲げた18項目のうち、日本の教員の平均は11.1項目でトップ。これを見ても、日本の先生の負担感が非常に大きいことがおわかりだと思います。

 こうした実態をふまえたとき、現在の教育が抱える喫緊の課題は、教師の負担をなんとか軽減することなのです。お金を出して、教員を増やす。何よりもそれが必要です。

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