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全責任を負う指揮者の人生は苦労の連続

改革を断行し、ロシアでモデルケースとして注目される

  • 伊熊 よし子

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2007年7月10日(火)

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 ロシア作品を得意とし、近年チャイコフスキーやラフマニノフ、ショスタコーヴィチなどの演奏と録音で国際的に高い評価を得ている指揮者、ドミトリー・リス氏が5月に東京国際フォーラム(東京・有楽町)で開催された「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2007」に参加するために来日した。

 マエストロ・リスとともに来日したのはウラル・フィルハーモニー管弦楽団。1934年にスベルドロフスク放送管弦楽団という名称で創立され、1992年に現団体名に改称された長い歴史を誇るオーケストラだ。ロシアのウラル山脈の西に位置するウラル地方の中心都市、エカテリンブルクに本拠を置き、旧ソ連時代は西側に紹介される機会もなく、「幻のオーケストラ」とも言われていた。

資金集めに奔走、楽員の給料をアップ

オーケストラの改革について語る指揮者のドミトリー・リス氏

オーケストラの改革について語る指揮者のドミトリー・リス氏(撮影:小川玲子、以下同)

 「そうなんです。このオーケストラは以前、演奏する場が限られていましたので、なかなか西側の人々に聴いていただけなかった。私が芸術監督に就任したのは1995年ですが、それから徐々に様々な改革をしてきました。今は欧米にも演奏ツアーができるようになり、こうして日本の聴衆の前でも演奏できるようになったわけです」

 リス氏がオーケストラとかかわるようになって最初に行ったのは、レパートリーを広げること、いい楽器を手に入れること、そして楽員の給料を上げることだった。

 「エカテリンブルクの市長をはじめ国際的なビジネスを行っている人や重要なポストに就いている人、音楽に興味を抱いてくれる富裕層などに働きかけ、資金を集めました。短期間で国の予算が50%、個人と民間の予算が50%というオーケストラの基本的な予算構造が出来上がり、全員の給料もロシアのビッグなオーケストラと肩を並べるまでになりました。それから現在まで、私の挑戦は続いています。政治家や役人とも交渉しますし、あらゆるところに出向いてオーケストラの資金集めに奔走しています」

すべての責任は指揮者自身が担うべきである

 すべてはいい演奏を生み出すため、いい音楽を人々に提供するためと明言するリス氏は、モスクワ音楽院で著名な指揮者、ドミトリー・キタエンコ氏に師事しているが、自分の目指す演奏を生み出す多くのすべを彼から学んだという。

 「キタエンコ先生は指揮者に必要なすべてを教えてくれました。テクニックや表現力などはもちろん、指揮者の人生で何が必要か、どんな可能性があるのか、自分は何をすべきかを教えてくれたのです。最も印象に残っているのは、自分の仕事に責任を持つということです。指揮者として100人を超すオーケストラのメンバーの前に立った時、その音楽のすべての責任は指揮者自身が担うということを忘れるな、ということです。成功する時はもちろんうれしいのですが、失敗した時に、オーケストラのせいにしてはいけない、自分が責任を取れとね」

 リス氏は何度も「指揮者の人生は苦労の連続ですよ」と口にした。音楽面だけを考えるだけではなく、オーケストラのすべてにかかわっている彼は、毎日新たな挑戦が目の前に突き付けられるのだそうだ。

 「でも、幸いなことに、ウラル・フィルには素晴らしいディレクターがいるのです。彼はアメリカのシカゴ交響楽団でマネージメントを学び、アメリカの仕事の進め方をロシアで実践に移した。それが私たちのオーケストラです。これはモデルケースとしてロシアの他のオーケストラの手本にもなっています。ロシアは今刻々と変わりつつあります。もう昔のやり方では世界に通用しません。新たな方向を目指さなければ、時代に乗り遅れてしまいます。演奏だけがよければいい、という時代は終わったのです。プロフェッショナルなオーケストラはどうあるべきかが問われる時代なのです。レコーディングを積極的に行うようになったのも、楽員の意識を高めること、集中力を養うこと、指揮者とオーケストラとの信頼感を強くすること、そして経済的な基盤をしっかり確保すること、といろいろなことが含まれているわけです」

 そんなリス氏の指揮は、踊るような激しい動作が特徴で、指揮姿は見ていて飽きない。どこから手が出てくるのか分からないと思うほどフワッと急に手が現われ、それがオーケストラへの指示につながり、両足も一瞬たりともじっとしていない。常に動き、ダンスをしているようで、指揮台から落ちそうになる。

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