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(7)大規模修繕! の前に、読むべき本

  • 山岡 淳一郎

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2007年7月18日(水)

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 大規模修繕は、大きな峠である。
 ここの乗り越え方次第で、資産価値が決まる。管理組合にとっては試練でもある。しかし、この峠を前向きに楽しみながら乗り越えるか、負担に感じて嫌々立ち向かうかでは、峠の頂から見える風景はガラリと変わってくる。

 専門家たちは異口同音に「管理組合ができたら、まっ先に長期修繕計画を見直せ」と言う。ふつうマンションを購入すると、管理会社から「修繕項目」「仕様」「修繕周期」「工事内容」などに基づいて作成された長期修繕計画表が手渡される。

 素人目にはうまくできているように見えるが、これは実はパターン化されたひな形に数値をはめ込んでいるケースが多い。建物の規模や立地、建築方法、消耗度が反映されたものではない。だから合理的な計画に作り直せ、というわけだ。

 通常、屋上防水や内外壁、バルコニーの床などの修繕をまとめて行う「大規模修繕」は10~13年周期。大規模修繕のたびに多額の修繕積立金が使われる。住民にとっては一大イベントなのだが、多くのマンションでは大規模修繕が1~2年後に迫って慌てて「修繕委員会」を立ち上げてコトに当たろうとする。できればもっと早く、動き出したい。

 修繕委員会の活動は、マンションのどこに何があり、どのような造りになっているのか、くまなく「フィールドワーク」することから始まる。居住者は、自分のマンションについて知っているようで知らない。玄関扉の内側のプライベート空間は熟知していても、ドアの向こう側、共有の廊下やエレベーター、給排水管、電気設備、階段、構造躯体、屋上の防水…などの知識は乏しい。灯台下暗しというわけだが、そこに光を当てる作業が大規模修繕の出発点になる。

山のような書籍の中から、この2冊を推す

 建築とは無縁の一般住民がフィールドワークするには、やはりナビゲーターがほしい。

 管理会社のスタッフが「技術知識力」「中立性」「対話力」を備えていれば問題ないが、「いずれ大規模修繕工事でひと儲け」と商魂たくましい状態では何をかいわんや。居住者自身がマンションの維持管理の知識を身につけることも大切だ。そこで書籍を参考に、となる。

 マンションの維持管理の本は山のように出版されている。
 私が、個人的に実践的導入書として優れていると感じるのは次の2冊だ。

・『マンション―安全と保全のために』(小林一輔・藤木良明著 岩波新書)

 コンクリート工学と建築学の第一人者が、学者にありがちな「上から見下ろす」姿勢ではなく、居住者の視点に立って、マンションのトラブル、欠陥問題から説き起こし、区分所有法の性格や問題点、管理組合の役割、大規模修繕工事の進め方、その他の保全工事、マンションの再生へと筆を伸ばす。

 ガイド本でありながら、「コンクリートの異常現象」については専門的知見が凝縮されている。特に大規模修繕のカギを握る「ひび割れ」の解説は、説得力がある。もしも、建物のひび割れから「白色の溶出物」が流れ出していたらチェックが必要だ。白い溶出物は「石灰が流れ出して生じた炭酸石灰」の可能性が高く「エフロレッセンス」と呼ばれる。

 「この現象は、ひびわれが部材断面を貫通しているか、部材内部をつうじて水がまわってきていることを物語っている。後者の場合、どこから水がまわってくるかをチェックする必要がある」とのこと。注意すべきはひび割れから「茶褐色の溶出物」が流れ出ている場合。「内部の鉄筋が腐食しはじめているシグナルである可能性が高い。早急に、ひびわれ部分を削りとって、鉄筋の腐食状態を確認する必要がある」と記す。マンションという建物のイロハを教えられる。

 もう1冊はこちらだ。

・『事例に学ぶ マンションの大規模修繕』(住宅総合研究財団マンション大規模修繕研究委員会 星川晃二郎・田辺邦男・山口実著 学芸出版社)

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