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人類はマラリアとどう闘うか?

決め手を欠いた制圧策

  • 藤田 宏之

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2007年7月13日(金)

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 前回は、世界中で猛威を振るっているマラリアの実態について紹介した。では、予防や治療で、いったいどのような対策が進んでいるのだろうか?

 有名なマラリアの治療薬が初めて見つかったのは、現在のペルーとエクアドルにあたるアンデス地方だ。原料となるキナノキはコーヒーと同じアカネ科の常緑樹。地元のインディオがキナキナ(樹皮の中の樹皮)と呼ぶ、この木の皮からとれる薬が「キニーネ」という名で世界中に広まった。



タンザニアの工場に積み上げられた薄い布は、マラリアの予防に威力を発揮する蚊帳の材料となる。ここタンザニアは、アフリカ最大の蚊帳の生産国。殺虫剤で処理した繊維でつくる防虫蚊帳でベッドを覆えば感染の発生は半減し、マラリアによる子どもの死亡も3分の1は防げるという。
タンザニアの工場に積み上げられた薄い布は、マラリアの予防に威力を発揮する蚊帳の材料となる。ここタンザニアは、アフリカ最大の蚊帳の生産国。殺虫剤で処理した繊維でつくる防虫蚊帳でベッドを覆えば感染の発生は半減し、マラリアによる子どもの死亡も3分の1は防げるという。

 キナノキの種や苗木をヨーロッパに持ち帰ろうと、遠征隊が何度も派遣された。南米に渡った隊員たちはアンデスの山道をたどり、キナノキが生える雲霧林をめざした。過酷な行軍で命を落とす者も多く、なんとか持ち帰った苗木はほとんど根づかなかった。後にインド、スリランカ、ジャワの大農園でキナノキの大規模な栽培が成功するまでの約200年間、マラリアの治療薬は原産地の南米から直接手に入れるしかなかった。

 マラリア原虫の増殖サイクルを断ち切る作用をもつキニーネは、多くの命を救ってきた。だが、効き目が長続きせず、あまり頻繁に服用すると、聴力や視力の低下などの重い副作用が時々出るという欠点もあった。

 1940年代になると、マラリア対策に役立つ画期的な新兵器が登場した。一つは、抗マラリア薬のクロロキンだ。化学的に合成できるこの薬は安価で安全、効果が長続きし、あらゆるタイプのマラリアを完全に治せるという、まさに奇跡の特効薬だった。

 発見は、もう1つあった。スイスの化学者パウル・ミュラーが、既知の化合物ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)がもつ殺虫効果を見いだしたのである。“史上最強の殺虫剤”DDTは病気を媒介する蚊やシラミなどの駆除に威力を発揮し、この功績でミュラーは1948年にノーベル医学・生理学賞を受賞する。わずかな量で何カ月も効果が持続するDDTを使って蚊を駆除すれば、マラリア伝播のサイクルを断ち切ることができた。

 クロロキンとDDTという新兵器を得て、WHOは1955年に地球規模のマラリア撲滅計画に乗り出した。「10年間で一掃する」という目標を掲げて10億ドル(約1200億円)以上の資金を投入、蚊を駆除するために毎年何万トンものDDTが散布された。

 撲滅に向けた地球規模の努力は一定の成果を上げた。カリブ諸国と南太平洋の多くの地域、バルカン諸国や台湾ではマラリアはほぼ制圧された。スリランカでは1946年には280万件の感染例があったが、1963年にはわずか17件に減少。インドでも、マラリアによる死者は年間80万人からほとんどゼロにまで減った。

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