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『作家の誕生』猪瀬直樹著(評:澁川祐子)~文豪は市場が作った

朝日新書、720円(税抜き)

  • 澁川 祐子

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2007年7月18日(水)

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『作家の誕生』

作家の誕生』 猪瀬直樹著、朝日新書、720円(税抜き)

評者の読了時間2時間50分

 副都知事に就任し、話題の人となった猪瀬直樹氏の最新刊である。だが、本書の舞台となっているのは政治の世界ではなく、近代日本文学界。猪瀬氏は、1995年に三島由紀夫の評伝『ペルソナ』、98年には川端康成と大宅壮一の『マガジン青春譜』、2000年には太宰治の『ピカレスク』と、評伝3部作を上梓している。いずれも膨大な資料をもとに、“生身の作家の姿”を描き出そうとした意欲作だ。

 本書は、同名のNHK人間講座のテキストに加筆修正したもので、文学好きならずとも読みやすい1冊に仕上がっている。既出の3部作が下敷きとなっているため、ことわり書きにもあるようにダブる記述も多い。3冊の点と点をつなぎ、時間軸にそって並べ替えた、いわばダイジェスト版だ。

作家という“職業”の成立史

 最初にタイトルを目にしたとき、“後世に名を残した作家たちが、どの瞬間をもってして作家になり得たのか”を解明する本かと思ったが、そうではなかった。もちろん、それぞれの作家の個別エピソードも含まれているのだが、あとがきに「本書で示したかったのは文章で身を立てる作家という職業の成立史である」とあるように、もっと大きな枠組み――雑誌という活字メディアが成熟し、文芸市場が拡大する流れのなかで、“いかにして作家がイチ職業として経済的に成り立っていったか”を追ったものだった。

 本書は20世紀が幕を開けた1901年の話から始まる。投稿雑誌の出現によって書き手と読み手の距離が縮まると、活字メディアはスキャンダルを消費しながら次第に読者を増やしていく。当時はまだ、夏目漱石が朝日新聞に勤めていたように、作家たちは「書く」ことだけでは食べてはいけなかった。だが名編集長・滝田樗陰(たきたちょいん)による「中央公論」、『真珠夫人』で一躍流行作家となった菊池寛の「文藝春秋」など、雑誌文化の隆盛によって、ついにはベストセラー作家が輩出される世の中になる。

 さらにその勢いに拍車をかけたのが、大正末期から昭和初期にかけて起こった「円本ブーム」である。1冊1円で予約販売された廉価本はまたたくまにヒットし、作家たちの懐は急速に豊かになっていく。作品の評価に市場原理が持ち込まれ、売れさえすれば「書く」ことだけで経済的に自立できるようになった。

 そうした作家たちの姿に憧れ、文学界を目指したのが太宰治や三島由紀夫である。

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