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「腎臓をあげる相手をテレビショーで決定!」そんな番組を許せるか。

2007年7月24日(火)

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 前回は、「事実報道」という言葉が引き起こす硬直性について考えた。これに続いて、報道における「演出」のあり方を議論してみたい。

 テレビマンユニオン副会長・今野勉は『テレビの嘘を見破る』(新潮新書)で、以前は被害がなければ「演出」は許されるのではないかと考えていたと書いている。例えば誤った情報を与えられることで視聴者が害を被る、取材を受けた人が誤った情報を流されたために害を受ける、そして同業報道関係者が取材がしにくくなる、そうした被害が生じていなければその演出は許されるのではないかと。これだけも、報道は何が何でも事実報道のみに徹せよと望む風潮の中では相当にラディカルだ。

 だが、今野は今はこの考え方をも捨て、「どこまで許されるか、という腰の引けた問題の立て方は間違っている」「許してもらえるから、その方法を取る、というのは作り手としての誇りを捨てた惨めなやり方」と書く。そうではなく、伝えるために最善と考えられるありとあらゆる手段を取る自由を認めるところから映像表現のあり方を考え始める。それが今野の現在の立場なのだ。

 それは、こんな事例を思えば理解しやすくなる。

「誰に腎臓を移植すべきか」

 先日、オランダのTV局BNNが「ザ・ビッグ・ドナーショー」と称した番組を放映した。それは37歳女性の末期ガン患者「リサ」が出演し、自分の腎臓を提供する相手を決めるというショッキングな内容だった。スタジオには腎臓の提供を望んで番組に応募してきた3人の腎臓病患者も出演、「リサ」は彼らの身の上を描いたショートビデオを見たり、移植を受けたい事情を実際に彼らに質問する。視聴者も3人のうち誰に「リサ」が腎臓を提供すべきか、携帯電話のメールで投票した。

 ところが番組の終盤、スタジオの照明が暗転し、まさに提供先が選ばれようとするクライマックスになって、司会者が「ちょっと待った」と叫ぶ。そして「リサ」が実は女優であり、死期が迫っているわけではないことを明かした。提供を希望した3人は本物の腎臓病患者だったが、「やらせ」番組の趣旨を理解したうえで出演していた。

 この番組に対しては、腎臓提供を斡旋するという触れ込みの放送内容が予告された段階でオランダ首相が放送中止を求めるなど論議を呼び、放送日には世界中から100人に及ぶ記者らが取材に訪れていた。結局、遠路はるばる取材に来たが無駄足となった記者たちは大いにブーイングしたが、BNNの視聴者は、やらせ番組を放送したことを謝罪しつつ「番組への怒りが臓器提供者の少なさへの怒りに変わることを望む」と述べたBNNサイドの説明を受け容れ、おおむね好意的にこの番組を支持したという(「News Week」2007年6月20日号などを参照)。

メッセージか、常に「事実」であることか

 こうした展開があり得たのは、ジャーナリズムにおいて最も大事なのはメッセージであり、メッセージを正しく伝えられる限りにおいては、たとえ「捏造」や「やらせ」という方法であっても許容する文化が前提になってのことだろう。

 これは実は「欧州標準」的な立場であり、例えば英BBCも「事実の意味さえ正しく伝われば、それがどう記録されたかは問わない」という立場を取っていると今野は前掲書で触れている。

 もちろん、それは「なんでもあり」のだらしない態度を意味しない。方法として的確でなかったと判断されれば厳しい批判を受ける。しかし、少なくとも制作の時点では「やらせ」も含めて幅広の表現の自由が表現者の側には与えられており、あくまでも出てきた結果から、報道における方法の的確さが判断される。

 これは日本の現状とはずいぶんと異なる。

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