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四国は高知県仁淀川町で、またしてもヒゲボソゾウムシを追いかける

2007年7月25日(水)

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 ここ七年ほど、四国で採集を続けている。最初はそんなつもりではなかった。でもヒゲボソゾウムシを調べだしたら、妙なことがわかって、四国から足が抜けなくなった。四国はヒゲボソ地図では、東西に分かれてしまうのである。

 四国が二つに割れるというと、南北だと思う人が多い。そうではなくて、東西である。四国の形を思い浮かべてもらえば、すぐにわかるであろう。亜鈴状をしている。その二つのかたまりで、それぞれヒゲボソの種類が違っている。

 大ざっぱにいうと、西側にはトゲアシ、東側にはケブカトゲアシがいる。また四国にはコヒゲボソがいない代わりに、その近似種として、クロソンヒゲボソが西に、ホソヒゲボソが東にいる。

 東西に分かれるなら、その境目がどこか、それを調べなければならない。そこがいささかやっかいである。おおよその見当はついているが、詳細になるとわからない。

 それで6月19日から四国入りした。たまたま高松で講演の予定があり、これは虫とは無関係。そのあと大阪の天野礼子さんの招待で、高知県の仁淀川町に行くことになった。天野さんは京大や高知大と共同で、海里連関学や有機農業関係のネットワークを作っている。

 これまで四万十川、吉野川の流域はかなり調べたが、仁淀川流域はまだよく調べていない。だから虫採りついでということで、ご招待を受けた。仁淀川町と高知市で話をする義務がついている。

 天野さんはたいへんアクティヴな人である。昨年も天野さんの関係で、高知の横浪半島に行った。ここには高知県の子どもセンターがあった。財政上の理由で県がそれを潰すというので、天野さんたちが努力して建物を残し、京大と高知大が協力して海里関連学の研究施設にした。その開所式に私も呼ばれ、京都の村田泰隆さんと対談をした。

 村田さんは村田製作所の会長さんだが、蝶の研究家としても著名である。土佐は初めてだといわれた。蝶に釣られて高知に来たらしい。施設の庭で対談をしたが、ちょうどツツジが満開だった。そこにアゲハが次々にやってくる。村田さんは蝶の写真を撮るから、おかげで気が散って、落ち着かないようすだった。

 もっとも私はついでに土佐市の蟹ケ池に行って、高知虫の会の人たちと虫採りをした。ヒゲボソは採れなかったが、タカハシトゲゾウが採れた。

 高松での講演を済ませて、高知に向かった、南風号を佐川で降り、天野礼子さんのお迎えで、旧池川町で八百メートルの高所にある永野雄一さんの別荘に行く。二十人は入るという大きな家である。永野さんは健康食品関係の仕事をしておられ、別荘の近所の人たちにトマトの栽培をさせているという。

 八角のホールがあってガラス張りなので、夜になると蛾がたくさん寄ってくる。残念ながら甲虫は少ない。やっと見つけたのが、ヒラズネ一頭。蛾では久しぶりにオオミズアオを見た。これは鎌倉の自宅にもよく来ていた巨大な蛾である。いまはほとんど見なくなった。

四国・徳島のリンゴコフキゾウムシ

四国・徳島のリンゴコフキゾウムシ

四国・徳島のハダカヒゲボソゾウムシ

四国・徳島のハダカヒゲボソゾウムシ

 20日の朝から、まず別荘の上の雑誌山へ行く。頂上は千三百メートルを超える。この山系は石鎚山ともあるていど切れており、四国カルストともつながらない。いちおう独立している。そういう点で、調べる価値がある。

 標高千百メートルあたりに、中嶋與市郎の切腹跡がある。維新の志士で、脱藩しようとして、ここで捕吏に囲まれて自害したという。水ノ峠というところで、ここを抜けると愛媛県である。

 ここではヒゲボソが四種類採れた。トゲアシとニシコブとキュウシュウとハダカである。トゲアシがいるということは、このあたりは西だということである。石鎚山も西で、四国カルストも西だから、問題はない。さらに東の方に東西の境界を求めなければならない。こうして仕事が増えていく。念のためだが、だれに頼まれたわけでもない。

 キュウシュウが採れたのには、ちょっと驚いた。四国ではこれまで、重信町、久万町でしか採れていない。私は高知県では始めてである。イタドリにたくさんついている。サクラも数多く植えてあるが、ソメイヨシノではない。しかもこのサクラにキュウシュウはいない。そうなるとこのキュウシュウは自然分布の可能性が高い。トゲアシも同じくらいいるし、ニシコブもいる。このあたりのイタドリはヒゲボソだらけである。もちろん他の樹木からも採れる。

 翌日、さらにその翌日と、雑誌山には三日間通った。なにしろヒゲボソが採れることはわかったから、安心して採りに行く。

 この山はふつうの地図には山名が出ていない。山頂付近は自然林が残って おり、大きなブナが生え、足元は低いクマザサである。斜面にはヒメシャラの大きいのも見える。立ち枯れのブナでもあれば別だが、こういうところではあまり虫は採れない。それに急斜面を上るので、息が上がってしまう。虫採りと山登りは両立しない。

 それでも頂上に行くまでに、いくつか副産物が採れた。セダカコブヤハズがいちばん大きい虫。足元の落ち葉の下に、黒いゴミムシが通るのが見えたの で、追いかけたが捕まらなかった。しみじみ年齢を感じる。ところが小さな茶色のゴミムシが横から出てきたので、お土産に採っておく。四国のチビゴミはよく分化していて、ひょっとしたら珍品かもしれない。

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「四国は高知県仁淀川町で、またしてもヒゲボソゾウムシを追いかける」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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