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第7回 構想固まる「冨嶽三十六景」

職人のための“デザイン集”に原型が見られる

  • 内田 千鶴子

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2007年7月19日(木)

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 北斎漫画第二編(1815=文化12年刊)に、寄せる波と、引く波が濃淡の墨で描かれている。

 北斎は、1800(寛政末年)頃、平仮名落款の洋風版画「おしおくり」や「賀奈川本杢之図(かながわほんもくのづ)」で、巨大な波に流されまいと必死に押し送り船を漕ぐ船頭たちの姿を、高い視点でとらえた作品を発表していた。押し送り船とは、房総や常陸から江戸へ魚や野菜を送る細型の快速船を言う。「おしおくり」や「賀奈川本杢之図」に描かれる波頭は、まだ猛獣の牙を思わせるほど鋭くはない。北斎漫画第二編に載る寄せる波の波頭も同様である。だが、その波は一定のリズムを保ち、ひたひたと悪魔が押し寄せてくるような不気味さをはらんでいる。

 引く波の方は、ばらばらと解(ほど)けた女の黒髪を思わせ、波と波の間にできる暗い空洞に、何物かが潜んでいそうだ。

 北斎漫画第三編に描かれる「船鬼(ふなゆうれい)」に至っては、長い髪が波間にうねるように流れ、左上部に口が裂け、けたけた笑う船鬼数人の小さな姿がぼんやりのぞく。ホラー映画の一場面そのものだ。こうした絵柄は、1794(文化3)年頃にかけて流行した読本(よみほん)の怪奇趣味の影響があると考えられる。

鍬形恵斎 「山水略画式」より「薩垂坂」図 図版提供:草艸社

鍬形恵斎 「山水略画式」より「薩垂坂」図 図版提供:草艸社


職人のための図案などをまとめたデザイン集

 北斎漫画十編を刊行後の1823(文政6)年、北斎は日本橋馬喰町の版元・西村永寿堂から、絵手本(えでほん)「今様櫛キン雛形(いまようせっきんひながた)」上中下の3冊を発表した。

 「今様櫛キン雛形」は当時、贅沢(ぜいたく)品であった櫛(くし)やキン(きせる)を作る職人が参考にする図案や模様をまとめたデザイン集である。上中の部には櫛の模様雛形、下の部にはキンに使用する模様が描かれている。

 上の部に、数々の波の雛形が上載され、かぜを落とす波・すづ・たき・さいくなみ・川・打ち合わせの波・とう波・さざ波など、波のパターンが種々ある。さいくなみは、大波に翻弄される押し送り船、打ち寄せる波は海上を暴れまくる龍のようにも見え、波頭はそれらの爪そのものだ。

 北斎はこの時点で、『冨嶽三十六景』の構想が頭の中をよぎったのだろうか。すでに、海・川・滝に流れる波の生態をこと細かく分析している。

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