
『政党が操る選挙報道』 鈴木哲夫著、集英社新書、700円(税抜き)
2時間30分
2005年の総選挙における自民党の圧勝について、メディアは「小泉劇場」という4文字を提示するのみで、それ以上の説明を放棄した。
つまり、あの選挙が「劇場」だったということは、オレら投票者は田舎芝居にひっかかったバカな野次馬だったということなのか? 仮に、あの選挙がイメージ先行の、プロパガンダ満載の、出来レースのシナリオ進行だったのだとして、だ。
でも、そのシナリオを一押しにしていたのは、何よりもまず、あんたらメディアだったはずで、だとしたら、そのメディアの中にいる当事者であるキミたちが、「小泉劇場」なんていう無責任な言葉を使って有権者にケツを持っていくのは、職業倫理にもとるんじゃないのか? ストリップ小屋の経営者が観客の好色をなじるのと同じで、そもそもが、スジ違いの批判ではないか?
私は、あれ以来、「小泉劇場」報道に、以上のような違和感を感じていたのだが、それについて、本書はひとつの答えを提示してくれている。
興行主は誰だった?
つまり、「小泉劇場」は、メディア主導の劇場ではなく、あくまでも自民党のコミュニケーション戦略本部(以下「コミ戦」と略す)が綿密にシナリオを書いて実行したひとつの大当たり興行だったというのだ。メディアもまた踊らされていたのであり、単においしいネタに飛びついただけのつもりでいるワイドショーや、きちんとした政策批判を展開したつもりでいたニュースショーも含めて、すべては、脇役だった、と。
著者の鈴木哲夫は、ずっとテレビ畑で報道の仕事にたずさわってきたベテランのテレビマンなのだが、その鈴木は、選挙後に、自民党のコミ戦で陣頭指揮を執った世耕弘成議員を取材して、愕然としたのだという。オレらは、要するに操られていたんじゃないか、と。それほどに、世耕が展開した戦略は見事だった。そしてまた、選挙後に、自らの手の内を語るにあたって、世耕は驚くほど率直だった。
というわけで、本書の前半部分は、ほとんど「世耕弘成物語」の様相を呈することになる。経歴を追うところからはじまり、広報マンとしての手腕や業績について、かなりの紙幅を割いている。
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