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「あなは、ほるもの」。

  • 小橋 昭彦

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2007年7月24日(火)

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 免許を持たないあなたに、前回紹介した車の例えはイメージしづらかったでしょうか。自分の前に割り込む車に対し、「割り込む誰か」という人を主体とした受け取り方ではなく、「割り込み」という行為だけを受け取ってしまうという話をしたのでした。主体と行為が切り離されて感じるこの現象が、匿名的な世界に似ているという点について、あなたも自身のネット経験、なかでも匿名掲示板と実名的な使われ方をするSNSを対比するなど、いろいろ考えていただけた様子。示唆に富んだ返信をいただいたこと、嬉しく思います。

 匿名の影響については、あらためてじっくり考えさせてください。今日は、そこへ向けた準備ということにもなりそうですが、「主体と行為が切り離される」ことについて、ある絵本を通してもう少し踏みこみます。この絵本については、以前、別のところで紹介したことがあるのですが、あなたにはまだしていなかったはず。

穴って何?

 ふざけているわけじゃなく、まじめな話につながっていきますので、少しおつきあいください。

 穴って何、と尋ねられて、あなたなら何と答えるでしょうか。
 愛用の『広辞苑第二版補訂版』(亡き祖母の思い出の品と以前紹介したものです)を引いてみます。「一、くぼんだ所。二、欠けて不完全な所。三、かくれが。」一部省略しましたが、以下、いくつかの定義が続きます。大学生のあなたを含め、多くの人が共有できる答えではないでしょうか。

 同じような質問を幼児にし、その答えをもとに描かれたのが、これから紹介する絵本です。文はルース・クラウス、絵はモーリス・センダック。センダックの絵本はいつも不思議な世界にぼくたちを運んでくれますが、この本はちょっと異色です。幼児による「あなってなに」への答えが、絵本のタイトル。『あなはほるもの おっこちるとこ』。

 いかがでしょう。別の質問に対する答えも紹介しましょうか。幼児によれば「いぬは ひとを なめる どうぶつ」で、「ては つなぐために あるの」。犬は食肉目の動物である以前に「なめる」動物であり、手は人体の一部である以前に「つなぐため」にあり、そして穴は、「掘るもの」であり「落ちる」ところ。そうなんです、すべて「自分」を基準に定義されているのです。なんていきいきした世界のとらえ方でしょうか。手は「つなぐため」なんて、とても深い答えにさえ感じます。

 ぼくはここに、自分が失ってしまった感性を教えられた気がしました。ぼくなら、「穴って何」と聞かれたとき、やはり辞書にあるような答えをするでしょう。それは、自分を観察者として世界から切り離し、対象だけを取り出して行う定義です。物事を客観視し、属性を列挙し、説明する。でも、子どもはそうじゃない。世界を、自分を含んだ関係性で見ている。

 今回の文脈で表現するなら、「主体」と「行為」を分けず、行為する主体としての視点から定義しているんですね。ぼくはこの絵本を本棚にたいせつにしまい、ときどき手にとっては読み返しています。ただし、だからといってぼくは、大人は子どもの純真さを失ったと説明することを好みません。大人の見方はある意味科学的な視点です。それが有効な場面もある。世界にはいろいろな見方があるということでしょう。

世界の、いろいろな見方

 うちの次男と三男は、幼稚園児と保育園児です。ひとりが抱っこと言うと、もうひとりも抱っことせがみます。仕方なく、ふたりを同時に両肩に乗っけたりする。スーパーヒーローみたいですね(ぎっくり腰にならないかひやひやだったりするわけですが)。で、二人をあわせると、30キロ余り。出荷する米袋でいえば三袋分です(重さを米袋に例えることをわが家ではよくします)。ところで、30キロの子どもと30キロの米袋。どちらが重いでしょうか?

コメント3件コメント/レビュー

相変わらず、視点が面白い。(2007/07/25)

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いただいたコメント

相変わらず、視点が面白い。(2007/07/25)

お子さんの釣りをする様の叙述を見て、「不寛容」な場である、匿名掲示板での「釣り」を連想しました。「その全体にとっては、魚が実際に釣れるかどうかなんて瑣末なことに過ぎない。」というのは、「不寛容」さを楽しむ「釣り師」たちとある種の相似性を示すのがなんとなく面白さを感じました。匿名性をもって構成される人工物は、ラベリングをせず世界に接する子どもからみた世界に通ずる部分があるのかもしれません。通ずる部分があるゆえに真逆足りうるのかもしれませんが。(2007/07/25)

「フロントホックブラって何?」と聞かれると、女性は「前で留めるブラ」と答え、男性は「前で外すブラ」と答える──という話を思い出しました。身のないコメントですみません。(2007/07/24)

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