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赤は欲望の色か?赤は誘惑の色か?

『完璧な赤「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』 エイミー・B・グリーンフィールド著 早川書房刊 定価2000円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2007年7月27日(金)

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『完璧な赤「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』 エイミー・B・グリーンフィールド著

『完璧な赤「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』 エイミー・B・グリーンフィールド著

 真っ赤な赤。それは権力者の象徴だった。ナポレオンは真っ赤なマントを翻し、法王は真っ赤な帽子をかぶる。歴史的絵画でもっとも目を引きつけるのは、効果的に使われた赤のポイント。

 純粋の赤がないときは、茶褐色で我慢したりした。ネアンデルタールやクロマニオンたちは、埋葬するのに赤土を使ったという。でもそれらは赤っぽいというだけで、純粋の赤とは違う。

 ここでも、中国が先端を行った。紀元前5世紀ごろ、朱とか丹(に)と呼ばれる色を開発した。それは辰砂(しんしゃ)という硫化水銀だった。毒性があり、日にさらされると黒ずむという大きな欠点があったが、それでも他に代わるものなし、ということでざっと1000年間使われていた。ポンペイの秘技荘の赤壁フレスコ画が名高い。

 真紅の布は高価で希少。王や征服者の色となった。

 大航海時代、新大陸に到達したスペインの征服者たちは、メキシコのアステカ人市場で見事な赤色染料が大量に売られているのに目を見張った。メキシコに最初に入った旧世界人はコルテスである。

 メキシコに歩を進めたコルテスは、そこに大量の黄金があると期待していた。しかし、黄金はなかった。そのかわり、コチニールという赤色染料を見つけた。これは旧大陸に持ち帰ると黄金並の価値をもたらすものだった。

 コチニールとは、一種の巻き貝であり、サボテンに寄生して一生を過ごす。生まれるとすぐ、サボテンにくちばしを突っ込み、樹液を吸って生きていく。繁殖力は旺盛で、コチニールにびっしりと取り付かれたサボテンは、白い綿毛で覆われてしまう。というのも、コチニールはワックス状の分泌物を吐き出し、それがサボテンを覆い尽くすからだ。

 コチニールが好むサボテンは、ウチワサボテンといわれる,葉状の節と鋭い棘をもつ。サボテンからコチニールをこそぎ落とすのが、収穫の第1期。次はコチニールを潰す。真っ赤な体液が滲み出る。この体液を媒染剤を使って、布に移せば、それまでなかった真っ赤な布が染め上がる。

 するとそれは黄金よりも高価でヨーロッパ市場で通用するようになる。王家は争って真っ赤な布を自分のものにしたがった。カリブ海からヨーロッパに帰ってくるスペイン船の船底には、どっさりとコチニールが積まれていた。

 コチニールの赤はスペインが独占していた。船底のコチニールを狙って海賊船が出没する。英国女王陛下公認の私掠船も編成される。各国王家のコチニールを狙った動きをつかむため、スパイも暗躍する。こんな具合で「真っ赤」な染料を巡る戦いは、どこか活劇的文化史の様相を帯びてくる。

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