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『ビジネス法則の落とし穴』 東谷暁著(評:荻野進介)
~ロングテールにご用心

学研新書、760円(税抜き)

  • 荻野 進介

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2007年8月2日(木)

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『ビジネス法則の落とし穴』

ビジネス法則の落とし穴』 東谷暁著、学研新書、760円(税抜き)

評者の読了時間1時間38分

 ビジネス関連の雑誌や書籍を読んでいると、「こうやればビジネスがうまくいく」という理論や法則に出くわす。数えたことはないが、汗牛充棟ただならぬ数あるに違いない。最近の流行りは「ウェブ2.0」か「ロングテールの法則」、5年前なら、「ムーアの法則」や「成長率・市場占有率マトリックス」、もっと前だったら、「ランチェスター戦略」「マズローの欲求5段階説」といったところだろうか。

 バブル崩壊後のエコノミストの言説を丹念に追った作品など、“検証型”ジャーナリズムを得意とする経済ジャーナリストが、今度はこの「ビジネス法則」に目をつけた。本書は、経営戦略から生産、マーケティング、販売、そしてIT関連のものまで、計50個の法則を俎上に載せ、その中身を辛口で論評したものである。

 実際のビジネスに役立つ法則もあるが、過去の理論の単なる焼き直しだったり、根拠の乏しい宣伝文句が一人歩きしていたりするものもある――これが作者の問題意識だ。

ロングテールは正しいか?

 50個のなかで、最も人口に膾炙し、実際のビジネスでも役立った代表例が「パレートの法則」である。19世紀末にイタリア人の学者、パレートが発見した、国家における富の偏在性を指摘したもので、「上位2割の人が全体の8割の富を占有する」という内容だ。これは現在、品揃えをどう変えても売れるのは上位2割の商品だという「80対20の法則」としても世の中に流布している。

 これを「発生頻度上位2割のミスが全体の損害の8割を生み出している」という品質管理の法則に読み替えたのがジュランというルーマニア人で、このジュラン流パレートの法則は日本にも輸入され、戦後の製造業復活、さらには経済成長を支えた。

 逆に、著者が最も不信感を抱き、その論駁に多くのページを費やすのが「ロングテールの法則」である。

 ある商品群の売り上げを縦軸に、商品別の売り上げ順位を横軸に取ると、売り上げ上位の商品は背が高いが、下位に行くに従い低くなり、恐竜の尻尾が伸びたような状態(=ロングテール)となる。アマゾンに代表されるインターネット通販では、この尻尾の部分がきわめて長くなり、これまでの店舗販売での常識とされる「80対20の法則」があてはまらない。需要の少ない多数品目が売り上げを制す、という主張だ。

 これに対して、著者は反論の狼煙を上げる。

コメント1件コメント/レビュー

東谷氏の論は素人目には面白いものもあるが、失礼ながら対象に対する十分な知識なしに暴走してしまう嫌いがあるようだ。まだ同書を呼んでいないので断定はできないが、論評者の文章から、どうやらロングテールそのものの本質が理解できていないことは明らかである。もっとも、パレートの法則とロングテールの数学的理解が正しくできているマーケターには、いまだ出会ったことはないが(クリス・アンダーソンを除く日本の著作物も含めて)。99%のマーケターおよび東谷氏は、ミドルテール部分とロングテールを同一視して論を展開するが、まじめに数式をいじればこのあやまりは一目瞭然である。つまり、東谷氏が非難しているのは、実はロングテールではなくミドルテール戦略なのである。『ロングテールの法則が打破したという「80対20の法則」はあくまで経験則であり、自然法則のように厳密に成り立つものではない...云々』の記述に、この大きな勘違いが如実に現れている。パレート則べき乗則(ロングテール)は矛盾したものではないことすらわかっていないということだ。せっかく問題意識は高いのに、それを完成した論考にまで高める知識と論理がついてこないというのは、著述家として、まことににもったいないことである。御参考:他の例http://www.asahi-net.or.jp/~dp8h-izn/economist.html(2007/08/02)

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東谷氏の論は素人目には面白いものもあるが、失礼ながら対象に対する十分な知識なしに暴走してしまう嫌いがあるようだ。まだ同書を呼んでいないので断定はできないが、論評者の文章から、どうやらロングテールそのものの本質が理解できていないことは明らかである。もっとも、パレートの法則とロングテールの数学的理解が正しくできているマーケターには、いまだ出会ったことはないが(クリス・アンダーソンを除く日本の著作物も含めて)。99%のマーケターおよび東谷氏は、ミドルテール部分とロングテールを同一視して論を展開するが、まじめに数式をいじればこのあやまりは一目瞭然である。つまり、東谷氏が非難しているのは、実はロングテールではなくミドルテール戦略なのである。『ロングテールの法則が打破したという「80対20の法則」はあくまで経験則であり、自然法則のように厳密に成り立つものではない...云々』の記述に、この大きな勘違いが如実に現れている。パレート則べき乗則(ロングテール)は矛盾したものではないことすらわかっていないということだ。せっかく問題意識は高いのに、それを完成した論考にまで高める知識と論理がついてこないというのは、著述家として、まことににもったいないことである。御参考:他の例http://www.asahi-net.or.jp/~dp8h-izn/economist.html(2007/08/02)

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