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「ノンフィクションの持つ力」~追悼・吉村昭

『羆嵐』 吉村 昭著 新潮文庫 400円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2007年8月3日(金)

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『羆嵐』 吉村 昭著

『羆嵐』 吉村 昭著

 時は第一次世界大戦のまっただ中。北海道天塩山麓の開拓村。国策によって、北海道の未開の谷間に、東北の寒村から移住してきた農民たち。天塩原野に鍬を入れたものの、内地とはまったく様相の違う自然の猛威に悩まされた。

 夏の蚊やブヨによる虫害は気が狂いそうになるほど激しく、秋の収穫時には蝗(いなご)の大群に根こそぎ収穫を食い尽くされる。思いあまって、奥の谷間に移住し、かろうじて一家を支えるだけの収穫を得るようになっていた。三毛別川の小さな支流六線沢の奥地に、農夫たちは隔絶されて生きていた。

 落ち葉の季節が終わった12月。集落では冬籠もりの支度に追われていた。15家族の冬眠生活が始まろうとしていた矢先、開拓村は巨大な羆(ヒグマ)に襲われた。羆は冬の前に冬眠するだけの体力を充填しようと、荒々しくなる。六線沢の農家を、見たこともないほどの巨大な羆が、まるでつむじ風のように襲った。羆嵐(ひぐまあらし)と人々に語り継がれていた獣害である。犠牲になった人は6人。日本獣害史上最大と言われる事件が起こった。

 吉村昭は真っ暗な夜に、飼っていた馬の異様な興奮から始まる、羆嵐の全容を克明に描き出している。村人たちの銃は普段使っていないので、引き金を引いても不発に終わる。羆嵐に対応する区長の冷静さ、他村の無頼ものに、羆の射殺を依頼する経緯、親戚同様の村人を失った苦悩、雪深い酷寒の闇。

 読んでいて鳥肌が立つほど怖いノンフィクションなど、滅多にあるものではない。

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