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文明と怪獣~『モスラの精神史』
小野俊太郎著(評:朝山実)

講談社現代新書、760円(税別)

2007年8月23日(木)

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『モスラの精神史』

モスラの精神史』 小野俊太郎著、講談社現代新書、760円(税別)

評者の読了時間6時間00分

 「モスラーゃ、モスラーゃ♪」と、双子の妖精が歌えば、遠い南の島からやってくる、あのモンスター蛾を軸に、ニッポンの戦後を見直そう。これが本書の試みである。

 著者の本職が文芸評論だけあって、リルケや三島由紀夫の言説を引用するなど、モスラのもつ文学的な側面への目配りが利いている。引き出しは豊富にして、語る口の熱の入れようには、少々モスラにとりつかれちゃった感もある。オタク度が高く、読んだ先から、「ねぇねぇ、知ってる? モスラはね……」と、仕入れた知識を誰かに聞かせてみたくなる、妙なテンションの本だ。

 東宝の怪獣映画「モスラ」が公開されたのは、1961年夏。60年安保闘争の翌年だ。

 ワタシが「モスラ」を初めて目にしたのは、リアルタイムではなく、1960年代後半、正月の深夜テレビだった。破壊シーンが待ち遠しいコドモだったゆえ、がっくりした記憶がある。現れたと思えば、匍匐前進するだけの芋虫に過ぎず、変身後も羽をバタバタさせているだけで、怪獣が持つドキドキ感に欠けていた。

 むしろ「こんなんテレビで流して大丈夫なん? 」と、コドモなりに衝撃を受けたというか、シンパイしてしまったのは、ザ・ピーナッツが演じる島の妖精(30センチサイズの小美人)が見世物扱いされていたことだ。後の大阪万博(1970年)を予見したかのような光景がそこには映し出されていた。好奇心丸出しの国民の大行列である。

モスラが蛾でなければならなかった理由とは

 1900年代初め頃から「先進国」でブームとなった「万国博覧会」、その目玉展示として、欧米各国は、統治下の「未開民族」を見世物としてきた。一家ごと南洋の島から連れてきて、展示館内で生活させ、「野蛮」ぶりを見下していたわけだ。いまなら人権問題である。

 つまり、「モスラ」は、そのことに何の疑問も抱かない、鈍感さへの批判が込められた映画だったんだねと、著者はわかりよく諭している。

 この本の売りは、『発光妖精とモスラ』という、あまり知られていない原作小説の発掘にある。同書は、当時売り出し中の純文学作家、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人による共同執筆だった。彼らに知恵を借りようとしたのは、東宝の田中友幸プロデューサー。これまで「ゴジラ」などを手がけてきた田中氏は、路線変更の手がかりを模索していた。

 1959年の皇太子ご成婚を機にテレビが急速に普及し、映画産業は翳りをみせていた。日活が「無国籍アクション」に、東映が「時代劇」に活路を見いだそうとするなか、東宝は横長大画面の「シネスコープ、総天然色スペクタクル」で、テレビとの差別化をはかろうとした。その目玉に据えられたのが「モスラ」だった。

 相当な意気込みで、米国のコロンビア映画と提携し、当時としては破格の2億円を投じるという大博打。舞台裏での、敗戦国日本が戦勝国アメリカと肩を並べるんだぞおー、という悲願と高揚感が読み取れもする。そして、ここに、モスラが蛾であった理由も存在した。

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