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大日本帝国の“お笑い”~『日本の戦時下ジョーク集』
早坂隆著(評:小田嶋隆)

中公新書ラクレ、740円(税別)

2007年8月24日(金)

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『日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争篇』

日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争篇』早坂隆著、中公新書ラクレ、740円(税別)

『日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇』

日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇』早坂隆著、中公新書ラクレ、740円(税別)

評者の読了時間3時間00分(2冊合わせて)

 昨年来、70万部以上を売り上げている前作『世界の日本人ジョーク集』は、テレビドラマや映画とのタイアップによる書籍ではない。出版社が巨大な宣伝費をかけたわけでもない。市井の研究者である1人の人間がコツコツ集めたジョーク集であり、そのジョークが読者の口コミでじわじわと評判を上げていった、いまどき珍しい、自然発生的なベストセラーである。冗談からコマーシャリズム……というよりも、一種のお伽噺だろうか。

 それだけに、次回作を望む声は多かったようで、この度、新作『日本の戦時下ジョーク集』は、2冊同時に刊行される運びとなった。構成は、1冊目が「満州事変・日中戦争篇」、2冊目が「太平洋戦争篇」。1941(昭和16)年の日米開戦を境界線に、それ以前と以後の大日本帝国ジョークを集成した形になっている。

 取材範囲は、非常に幅広い。巻末の参考文献索引が6ページに及んでいることを見るだけでも、著者である早坂のジョーク収集作業が、容易ならざるものであったことがうかがえる。大変だったと思う。

 取材の徹底ぶりは、ジョークの解説部分にあたる文章にも反映している。地の文が良いのだ。

日本人の笑いのツボ

 別の言い方をするなら、本書は、前作同様、「ジョーク集」というよりも、ジョークを素材としたエッセー集であり、ジョークを足がかりに古い日本を取材した一種のルポルタージュなのだ。

 分量的にも、収集したジョークが全体に占める割合は、3割弱に過ぎない。残りの7割は、著者によるテキストだ。内容は多岐にわたる。読み進む場面にあわせて、戦前史のおおまかな流れを解説し、当時の生活や、物価、風俗、事件などについても、折りに触れて紹介している。あわせて、「笑い」「日本人」といったテーマについてさらりと持論を展開している。つまり、ひとつの戦時庶民史としても読める書物に仕上がっているわけだ。

 さて、同じ「日本」の文字が入ってはいても、本書は、前作とは、若干おもむきが違う。というのも、『世界の日本人ジョーク集』が、世界各国に取材して、日本人についてのジョークを集めた、国際ジョーク集であったのに対して、今回の本は、日本人の、日本人による、日本人のための国産ジョーク集だからだ。

 その意味で、本書は、空間的な広がりよりも、時間的な深みを味わうべき、ヒストリカルなジョーク集であり、一種の時間旅行エッセーだ。なるほど。われわれは、日本人だ。月日が流れても、戦争をまたいでも、笑いのツボは、変わっていない。

 太公望、釣りの話に油がのって、「じっさい、大きな魚でした。水から引き上げたら海面が三寸ほど低くなりましたからね」

 と、こういう小粋なネタは、時間にも国境にも左右されない。

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「大日本帝国の“お笑い”~『日本の戦時下ジョーク集』
早坂隆著(評:小田嶋隆)」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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