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江原啓之から遠く離れて~『スピリチュアルの冒険』
富岡幸一郎著(評:山本貴光+吉川浩満)

講談社現代新書、720円(税別)

  • 山本 貴光,吉川 浩満

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2007年8月27日(月)

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『スピリチュアルの冒険』

スピリチュアルの冒険』 富岡幸一郎著、講談社現代新書、720円(税別)

評者の読了時間1時間40分

 ここ数年の癒しブームのなかで、やたらと「スピリチュアル」や「スピリチュアリズム」という言葉を耳にするようになった。しかし、この外来語の意味を正確に把握している人はどれだけいるだろうか。

 spiritualを辞書でひいてみると、「精神的な」「霊的な」といった訳のほかに、「白人霊歌(ホワイトスピリチュアル)」や「黒人霊歌(ニグロスピリチュアル)」ともある。spiritualismも「精神主義」「交霊術」といった意味のほかに、哲学では「唯心論」と訳されることがわかる。

 「精神的な」と「霊的な」のどちらに解すかだけでも、これらの外来語から受ける印象はかなり異なるはずだ。

 妖怪博士・井上円了(1858-1919)によれば、近代のスピリチュアリズム(井上の訳語では「鬼神術」)は、19世紀半ばにアメリカで起きた2つの交霊事件をきっかけとして興隆した。また、同じ頃、スコットランド人の霊媒ヒューム(ホーム)が空中浮遊や交霊などの心霊現象を起こし、イギリスでの心霊研究に火をつけている(『妖怪学講義録』1894、現在は『井上円了妖怪学全集』柏書房)。

 要するに、19世紀から現代にいたる欧米発のスピリチュアリズムとは、霊的な世界(死後の世界)が存在し、生者が霊と交信できると考え実践する心霊主義にほかならない。

 いま「スピリチュアル」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、江原啓之だろう。彼は、人生の悩みを抱える人に安心を与えるというスタイルを採っているが、そこで言われるスピリチュアリズムとは、まさにこの心霊主義である。

スピリチュアルブームなど小さい小さい

 これに対して、本書はまったく別の角度からスピリチュアリズムをとらえることを提案する。つまり、宗教という枠組みから考えてみようというのだ。

 著者はまず、英語のスピリチュアリティの語源に着目する。これはラテン語のスピリトゥスに由来し、「息」という意味と、「霊感(インスピレーション)」という意味がある。

 「息」にせよ「霊感」にせよ、どちらも目に見えず、外から来るものをわたしたちが受け入れるものだ。呼吸によって身体がリフレッシュされ、不意の思いつきやひらめきで精神の状態が(ひいては行動が)変化する。外部からの働きで心身が更新されてゆくというイメージだ。

 神から霊感を吹き込まれて、生まれ故郷での生活を捨てた「創世記」のアブラハムはその典型。『旧約聖書』が伝えるように、ユダヤ民族がこのアブラハムの行動から始まったのだとしたら、その霊感の効果は絶大と言うべきだろう。

 このように、どこか自分を超えたところからやってくる霊感を受け入れ、単なる利己を超えた行動に出る者たちが、本書ではスピリチュアリストと呼ばれる。こうした宗教者たちのダイナミックな実践は、超越者との交流をとおして、自己だけではなく他者、そして共同体のありかたをも変えていく。スピリチュアリティに、このような宗教性を見るならば、昨今のスピリチュアル・ブームの狭小さが浮き彫りにされよう。

 本書ではイエスやパウロなども取り上げられているが、ことに興味深いのは北村透谷、内村鑑三、鈴木大拙、折口信夫、埴谷雄高、椎名麟三、三島由紀夫、田中小実昌といった文学者・思想家をスピリチュアリストとして遇する列伝風の第二章と第三章だ。

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