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首相、あなたは強いのです~『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』
飯尾潤著(評:荻野進介)

中公新書、800円(税別)

  • 荻野 進介

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2007年8月29日(水)

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『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』

日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』 飯尾潤著、中公新書、800円(税別)

評者の読了時間3時間50分

 先の参議院選挙で一敗地にまみれた安倍・自民党。党外だけでなく党内からも首相の退陣を求める声が上がったが、早々と続投が決まった。

 日本は議院内閣制の国だから、公約うんぬんを除外すれば、安倍の行動は何ら非難されることではない。議院内閣制とは「議会で多数派を形成した政党が行政権を握る制度」という意味であり、この場合の議会とは衆議院である。現在、480ある定数のうち、自民党は306議席を占める。

 本書は、日本における議院内閣制の分析を主軸に据え、国会、内閣、首相、政治家、官僚、政党、選挙制度といった日本の政治を構成する各パーツの機能を、歴史や国際比較も踏まえて解き明かしながら、日本という国の統治構造を浮き彫りにした本である。

 議院内閣制の本質とは何か。一言でいえば、有権者から国会議員、首相、大臣、官僚と、権限委任の連鎖が生じるところにあるという。

 つまり、有権者による国政選挙を通じて選ばれた国会議員(衆議院議員)が内閣の組織者としての首相を選任する。選ばれた首相が、行政権を行使するため、国務大臣を選任し、内閣の構成員とする。各大臣が分担して行政事務を行う際、補佐を行うのが官僚の役目だ。官僚の行動を有権者がコントロールできるのもこの権限委任の連鎖があるからだ。

 ところが、日本ではこの通りに議院内閣制が機能していない、と著者は書く。

自民党と政府のねじれた関係

 例えば首相の交代問題である。自民党が政権を独占しているため、衆議院選挙とは関係なく党内選挙で交代が決まる。あるいは各大臣の任命権限は本来、首相にあるが、実際は当選回数という基準が幅を利かしている。

 また憲法では、国務大臣=内閣の一員として位置づけられているが、大臣個人は外務省や厚生労働省といった自分が所轄する「役所の長」という意識でいるのが一般的だ。「国務大臣」という名称もほとんど使われない。

 著者はこの現象を、議会を背景とする議院内閣制に対して、各省庁の官僚たちの代理人が集まる「官僚内閣制」と呼ぶ。この弊害は大きい。政府の最終的な意思決定主体は首相なのに、それが不明確になるからだ。

 さらに日本の議院内閣制を骨抜きにしているのが与党という存在である。諸外国では与党=政権党を指すが、日本では微妙にニュアンスが異なる。著者はこれを「政府・与党二元体制」と名づける。

 例えばご立派な(自民党)党本部である。ここでは各種会合が頻繁に開かれ、政策討議から始まり、省庁や議員間の利害調整など、あらゆる政治活動の舞台になっている。これは世界でも珍しいことらしい。他にも、政調審議会に代表される政策審議機関、族議員、派閥、当選回数による入閣基準など、議員内閣制を変質させている与党自民党内のシステムは枚挙に暇がない。

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