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孤立無援を支えるもの~『努力論』
斉藤兆史著(評:朝山実)

ちくま新書、680円(税別)

2007年8月30日(木)

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『努力論』

努力論』 斉藤兆史著、ちくま新書、680円(税別)

評者の読了時間4時間00分

 「努力」「忍耐」「根性」。観光地のお土産店を覗くと、筆文字の飾り物を目にしたものだが、パタリと見かけなくなった。何時を境にして、消えてしまったのか。

 「勤勉の美徳」が危機に瀕している、と著者はいう。事実、「努力」という言葉、若い世代には、ダサい言葉の筆頭らしい。

〈スポ根アニメの最後は、身体を酷使し、ボールが投げなられなくなるとか、悲惨な結末ばかり。そんなものをイッパイ見せられたせいで、夢がもてなくなったのが大きいかもしれない〉

 30代の知人は、ストイックな努力の行き着く先が悲劇では、見習おうとは思わなくなるという。リアルタイムで「少年マガジン」の『巨人の星』を読みふけっていたワタシなんかは、あの大団円にカタルシスを味わったものだというと、友人は異星人を見る目になっていた。

 「キンシャサの奇跡」を起こしたボクシングのモハメッド・アリ、日本全国測量を成し遂げた伊能忠敬、桶の水を被って勉学に励んだ儒学者の新井白石など、多様な分野の「偉人」たちの業績と奮闘ぶりを紹介しながら、「労せず功を得ようとする風潮」を戒めるのが、本書の意図するところである。

小細工なし、直球勝負、でも「修身」にはならない

 著者の本業は英語の先生であり、英語習得の指南書や翻訳以外の著書はこれが初めてだという。街で目にするマナー知らずの若者への小言が止まらないあたり、執筆の原動力は世相への怒りと見える。小細工なしの努力奨励の論説展開は、あまりの直球、まるで風車に向かって突進する老騎士である。

 うざってぇ「修身の本」に見えるのだが、どうして、これがなかなか面白いのだ。

 偶然目にしたロックバンド、その隻腕ドラマーの演奏に胸打たれ、努力の成果たるそのテクニックについてじっくり書き込むなど、とりわけハンディに挫けない人の例になると、筆が熱くなる。また、将棋の鬼才・升田幸三にも多くのページを費やしている。

 著者は、若かりし頃はドラマーに憧れたことも、大学の将棋部に所属していたこともある。「学習マニア」だと告白するあたり、チャーミングで、いまだって合気道の道場に通っているそうだ。器用貧乏という言葉があるが、熱中するもののモノにはならなかったことになる。「努力」を論じるのも、一つのことを成し遂げた人への憧れや尊敬が働いているのかもしれない。

 それでも、本職の英語に関しては水が合っていたのだろう。英語の習得に、安易な道はない。徹底した努力が必要と説く、その一方で、ただ努力しても仕方がない、効率的な時間の調整をしなければ、と細かなアドバイスもする。挫折体験が、愚直一本やりの根性論から距離を取らせたようだ。

 『巨人の星』に憧れた人は一杯いる。飛雄馬を真似ようとした人だって、大勢いた。しかし、星を掴んだ人は限られている。適わなければ、その努力はすべて水泡に帰す。「だったらムダじゃん」「ソンじゃん」てな、あきらめが努力を厭わせるようになった。

 しかし、努力っていったいナンなのか。著者はこう語る。

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