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(9)不良債権処理のためのマンションブーム、危険水域に

  • 山岡 淳一郎

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2007年8月28日(火)

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 マンション市況が、ついに「危険水域」に突入したようだ。いつ下落しても不思議ではない。

 不動産経済研究所の調査によると、7月の首都圏マンションの平均価格は5305万円。1992年11月(5711万円)以来の高値となった。東京23区では、7月の平均価格は7109万円と前年同月比900万円近く高騰。「いつか来た道」をひた走っている。

 不動産業界は「都心部での億ションの売り上げが好調で、平均価格を押し上げた結果」と「前向き」にとらえる。確かに野村不動産が千代田区で売り出した億ション306戸は即日完売、積水ハウスの渋谷のマンションの平均価格は3億円と、景気のいい話も飛び込んでくる。富裕層の億ション購入熱が高いのは事実だろう。「まだ上がる」と転売を狙って、ひと勝負かけている人たちもいるようだ。

高価格帯は好調だが、ボリュームゾーンが飽和

 だが、マンション需要を支える年収600~700万円の一般サラリーマン世帯は、この値段では手を出せない。既にマンション在庫は膨張し、発売戸数は今年1月から前年同月比-11.6%、2月-19.4%、3月-28%、4月-9.3%、5月-17%、6月-10.9%、7月-10%と「減少」を記録し続けている(推移についてはこちらの「経済関連指標」も参照)。

 1991年のバブル末期、首都圏ではマンション在庫が6万戸まで膨らみ、デベロッパーは供給戸数を2万6000戸に減らして平均価格5500万円を維持したが、ここを境に一気に下落。2002年には平均3800万円台にまで下がった。値段が下がれば買いたい人は増える。99年から7年連続、バブル期並みの8万戸供給が続いた。デベロッパーは、「1割、2割は当り前」との値引き合戦、2次販売業者への投げ売り、あるいはリート(不動産投資信託、REIT)やファンドへの「一棟売り」と、ひたすら「建てて売る」に徹した。

 しかし、マンション用地の大量放出が一巡すると、用地価格はみるみる高騰。都内の用地価格は、公示地価の2~3倍、ときには4倍近くにまでハネ上がった。

 デベロッパーは、専有面積を削ったり、二重天井や二重床の廃止、内装のグレードを落としたり、と懸命に価格を抑えにかかるが、原油高での建設コストの急騰もあって、値段は上昇に転じた。

 デベロッパーが過剰在庫を抱えつつ、用地価格の上昇で、供給を先送りして高価格を保つ。この不安定な状況は、バブル崩壊前夜と酷似している。

 危険水域を感じさせるもうひとつの因子は、都内の用地難から千葉、神奈川、埼玉で加熱するマンション販売が需要をとらえきれず、空回り気味であること。7月の神奈川の発売戸数は前年同月比-1.3%にとどまり、埼玉は+43.3%を記録。販売ラッシュの様相を呈しているが、神奈川、埼玉の平均契約率は64%と好調の目安とされる70%を大きく割り込んでいるのだ。

 デベロッパーは、用地価格の動向をにらみ、より安い土地を求めて都心と郊外を行ったり来たりする。私は、これを「振り子現象」と呼んでいる。バブル崩壊後の地価下落で都心回帰したデベロッパーが、再び高度成長期のように郊外に脱出するものの、行った先にお客がいない。この先、需要という受け皿が失われた状態でマンションを建て続けたらどうなるか…。

過去2回の大マンションブームとは、起爆剤が異なる

 近年のマンションブームを1970年代初頭の田中角栄の列島改造、昭和末期のバブルと並ぶ「第3のバブル」ととらえる人もいるが、地価のフィルターを通して見れば、前2者とは状況が異なることに気づく。

 1970年代のそれは田中が著した『日本列島改造論』に「新幹線鉄道網」「幹線自動車網」「本州四国連絡橋のルート」など「大規模開発候補地」が「地名入り」で挙げられたことで、火がついた。開発候補の土地を、不動産業者はもとより、商社など大企業が先を争って買い占め、地価は大都市圏のみならず、全国的に高騰した。例えば「25万人都市」の候補となった岡山県津山市では、5年間で坪7万円だった土地が企業の買い占めによって東京並みの坪30万円にまで高騰している。

 角栄が描いた公共事業の青写真は、地価高騰でいったん頓挫するが後世の政権が継承。さまざまな批判はあれども、公共事業は実需を生み、地価高騰を下支えした。

 昭和末期バブルは、経済のグローバル化、とりわけ米国、欧州、東アジアの3三極構造「24時間金融システム」が秒読み段階となり、東京のオフィス機能整備の国際的ニーズが高まったことと、双子の赤字に苦しむ米国からの「内需拡大」要求によって引き起こされたと言えよう。その引き金を引いたのは、85年に国土庁が発表した「首都改造計画」の「新規事務所需要推計」だった。

 この推計で建設官僚は東京23区で1982~2001年にかけて年平均「263ヘクタール」のオフィス床が不足すると発表。業務用地を確保するために一般企業も「地上げ」に奔走し、都心の地価はうなぎのぼり。この推計は、条件設定があいまいで「過大」だったと指摘されるが後の祭り。玉突き式で全国的に地価が火の粉を吹いて燃え上がった (これらの経済的背景は、拙著『あなたのマンションが廃墟になる日』(草思社)に詳述)。

 いずれにしても、列島改造もバブルも出発点は大規模開発へのニーズの高まりだった。それを過大に喧伝し、土地の値上がり益を狙う企業や個人が群がって信用膨張を来した。

 ところが、今回のマンションブームはバブル崩壊後の「不良債権処理」が点火剤になっている。

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