カトリーナは2005年に米国南部を襲い、自然災害としてはこの国で過去最悪の被害をもたらした。被災直後の現地では、多くの人々が復興に向けて固い決意を見せていた。だが、専門家や技術者の間にはいま、悲観的なムードが広がりつつある。カトリーナはほんの序の口で、同じような災害がいずれは必ず再発すると分かってきたからだ。被害を食い止めるには、国が手厚い支援を際限なく注ぎ込むしかないだろう。
ニューオーリンズは、米国でも低地の多い地域として知られ、今も年間で最大2.5センチのペースで地盤が沈み続けている。既に海抜マイナス5メートルに達したところもある。
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また、自然の緩衝地帯として都市を嵐や高潮から守っていた湿地が、次々に水没している。ミシシッピ川の氾濫防止と輸送の利便性向上のために上流にダムと堤防が建設された結果、下流のニューオーリンズに達する堆積物や栄養分が減ってしまったからだ。ルイジアナ州全体では、1930年代以降、沿岸部が5000平方キロ近く(東京都の面積の2倍強)も水没した。2005年のハリケーン「カトリーナ」と「リタ」だけでも、合わせて562平方キロの湿地を消滅させた。
そして何よりも脅威となっているのが、地球温暖化だ。近年の海面上昇は、約1万年前に氷河期が終わって以来、最も速いペースで進行している。次の世紀までに、海面は控え目に見積もっても1メートルほど上がるおそれがある。また、それより前に、海水温の上昇によってハリケーンが威力を増し、多発するようになるかもしれない。
堤防など、洪水から街を守る構造物がいまだに復旧していないのも問題だ。この地域の堤防の建設と保守を担当している米国陸軍工兵隊によると、既に10億ドル(約1200億円)もの資金をつぎ込んだにもかかわらず、カテゴリー3(最大風速50~58メートル)のカトリーナのような100年に1度のハリケーンに耐えるように堤防などを補強する工事は、2010年までかかるという。
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