• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ヨーロッパ中心主義からの脱却――アジア編

世界規模な影響力を持ちながらも、地域性や民族性の魅力を表現する

  • 林田 直樹

バックナンバー

2007年9月3日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

ヨーヨー・マの最近の活動が示唆するもの

 クラシック界のトップ・アーティストであり、中国系アメリカ人のチェリスト、ヨーヨー・マのニューアルバムが先頃ソニー・クラシカルから発売された。題名は「ニュー・インポッシビリティーズ」。

 しかし、このアルバムを実際に聴いてみて、これがクラシック音楽だと思う人はまずいないだろう。おそらく誰もが、中近東かインドあたりを拠点にした先鋭的なワールドミュージック・バンドの音だと思うのではないだろうか。しかしこれは、まぎれもなく、クラシック音楽界をリードするチェリスト、ヨーヨー・マの新作アルバムなのだ。

 実はこのアルバムは、ヨーヨー・マがリーダーシップをとる「シルクロード・アンサンブル」としての3枚目にあたる。シルクロード・アンサンブルとは、日本・韓国・モンゴル・中国・インド・イラン・アゼルバイジャン・アルメニアなどの民族楽器プレイヤーが一堂に会して、ヴァイオリンやチェロなどの西洋クラシックの楽器とともにアンサンブルを奏でてみよう、という途方もない試みである。今回のアルバムでは、クラシック音楽界でも屈指の名門オーケストラであるシカゴ交響楽団との共演も実現した。ヨーヨー・マはその拡大版であるシルクロード・プロジェクトにも1998年以来取り組んでおり、地中海から太平洋まで伸びるシルクロード沿いの地域の文化・芸術・知的伝統の研究を推進しつつ、音楽面のみならず様々な文化プログラム、教育プログラムにまで発展させてきた。

 ヨーヨー・マのこうした非ヨーロッパ圏音楽への強い関心は、シルクロードだけに止まらない。例えば2002年に録音した「オブリガード・ブラジル」は、ブラジル音楽界のスペシャリストたちとの競演によるボサノバ系アルバムだったし、そのほかにもボビー・マクファーリンとの『ハッシュ』、マーク・オコーナー、エドガー・メイヤーとの『アパラチア・ワルツ』と『アパラチア・ワルツ2』、日本でも一世を風靡(ふうび)した『ヨーヨー・マ プレイズ・ピアソラ』など、いわゆる旧来のクラシック音楽のレパートリーには全くこだわらないクロスジャンルな活動が、今やメインとなりつつある。

 クラシック界のトップ・アーティストであるヨーヨー・マのここ10年来のこうした傾向は、実は現在のクラシック音楽の大きな潮流をもっとも先端的な形で象徴している。それは―― ヨーロッパ中心主義からの脱却――という潮流だ。

 もちろん、アメリカの実験音楽の作曲家ジョン・ケージ(1912-1992)や高橋悠治(1938-)らの例を挙げるまでもなく、ヨーロッパ中心主義からの脱却は、長らく現代音楽の世界では大きなテーマであった。しかしそれは、あくまで一部のアーティストや識者の側からのイデオロギー的な動きであり、それがコマーシャルな音楽シーン、一般の聴衆の嗜好において、1つの大きなムーヴメントとなることはありえなかったのである。

 しかし最近の様相は一変した。脱ヨーロッパ化、そしてアジアの台頭は、近年ますます顕著になってきている。

名門コンクールの上位入賞者の大半をアジア系が占める現実

 例えば、近年の国際的な名門コンクールの上位入賞者の顔ぶれを見てみると、東洋人の活躍は目覚しいものがある。去る6月に神尾真由子がヴァイオリン部門で優勝して話題をさらった第13回チャイコフスキー国際コンクールの場合、同じヴァイオリン部門の入賞者を見てみると、第2位と第3位こそロシア人とドイツ人だが、第4位と第5位は韓国人、第6位は中国人であった。また、2005年10月に開催された、もう1つの有名コンクールである第15回ショパン国際ピアノ・コンクールの上位入賞者は、第1位こそポーランド人のラファウ・ブレハッチが獲得したが、第2位はなし、第3位は韓国人2人、第4位は日本人2人、第6位は香港系中国人。

 ほかに例を挙げると枚挙に暇がないのでこの辺でやめておくが、とにかく今コンクールでは東洋人が圧倒的に強い。若いアーティストの供給力という点では、すでにアジアはヨーロッパを凌駕(りょうが)しつつある。特にピアノ界における中国人の活躍は今後さらに加速されるだろう。5000万人とも言われる中国のピアノ人口の多さを巨大マーケットとして意識したのか、クラシック界で最も権威ある老舗レーベルの1つであるドイツ・グラモフォンが、前回ショパン・コンクールの覇者ユンディ・リや、アメリカを中心にセンセーションを巻き起こしているラン・ランといった若手中国人ピアニストと契約を結び、しかも次々と新譜をレコーディングしているのはその表れである。

コメント0

「音楽脳を刺激しよう」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人々が働きたいという会社になるには 「働きやすさ」と「働きがい」、この2つが必要だ。

川野 幸夫 ヤオコー会長