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試される日本人~『アメリカに問う大東亜戦争の責任』
長谷川煕著 (評:朝山実)

朝日新書、700円(税別)

2007年9月4日(火)

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『アメリカに問う大東亜戦争の責任』

アメリカに問う大東亜戦争の責任』 長谷川煕著、朝日新書、700円(税別)

評者の読了時間4時間00分

 小学生の頃、教師が興奮口調で、「きょうは寄り道せず、みんなまっすぐ帰るように。そして、テレビを見なさい」と念を押していた。

 原爆が投下された直後のヒロシマ・ナガサキの、何万フィートにも及ぶ記録映像がテレビで放映されるという。大人たちの様子も、いつもとは少し違っていたように思う。たしか、夏休み前の土曜の午後だった。

 気持ちが、どよん、と沈むとともに「なぜアメリカがこれを撮影していたのか?」という疑問を抱いたのを覚えている。

 米軍は医療援助をしている、苦しんでいる日本人を助けてくれるいい人たちなんだ。と、しばらくは思いこんでいた。ほんとうは、自分たちが落とした原爆の効果を調べたかったんだ。そう理解したのは、だいぶ経ってからのこと。

 広島、長崎へ派遣された米軍の調査団の手際のよさ、撮影されたフィルムが20年近く封印されたままだったこと、関係者たちの事後の動きを見れば、原爆は何を目的に投下されたのか、一目瞭然だ。

 原爆投下は、実験のための実験だった?! と、著者は綴っている。原爆投下の時には新潟に学童疎開していた経験を持つ、元新聞記者だ。

 米国の教師たちは長年にわたり、「原爆投下は、戦争を早く終わらせるために必要だった。米軍の侵攻による犠牲を少なくするために貢献した」と子供たちに教えてきたし、アメリカの世論も、原爆に対して罪の意識を抱くことはない。

 アメリカは民主主義の理想国家ではあるが、自分たちの理解を外れたものに対しては、文字通り容赦がない。ベトナムに枯葉剤を撒き散らしたのも、アメリカだった。

 著者は、鈍感すぎるアメリカの常識に疑問を投げかける。

 アメリカ世論に原爆投下を正当化させたのは、こんな理由からだ。なにしろジャップはカミカゼだ。本土決戦ともなれば、米軍の犠牲は未曾有のものになっていただろう。日本も、犠牲を抑えられてよかったじゃないか。

 刷り込みは恐ろしいもので、日本にも終戦を早めたから「やむをえなかった」と口にする人もいる。著者は、そんな「原爆肯定」論は後出しの屁理屈だと、資料をもとに立証していく。

 当時、日本の降伏は時間の問題であるとの認識がアメリカの政権中枢でも有力で、複数のパイプを使い、天皇の扱いをめぐっての折衝が極秘裏に行われていた。

 逆に、原爆投下を何がなんでも実施するために、原爆の完成まで戦争を長引かせようとした動きもあったと推測される。

 もうひとつ。トルーマン大統領が最終決断を下した背景には、戦後を見据えた政治地図があった。一大勢力をなしつつある旧ソ連をけん制するために、原爆が使われたという見方である。

 そして、原爆の開発を推し進めてきた責任者の発言だ。

 広島、長崎、小倉、新潟。さらに、京都が原爆投下の最有力候補に挙げられていた。

 各地でB29による空襲が繰り返されていた中で、これらの都市には、その威力を測定するために、攻撃は控えられていた。

 計画全体の指揮官だったグローブス少将は自著のなかで、こんなふうに語っている。

「私はとくに(略)京都に執着を覚えたのだが、それは既述のように、われわれが原爆諸効果の完全な知識を入手するためにはまたとない広さを持っていたからである。この点、広島のほうはそれほど理想的とはいえなかった」

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