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今クラシックは非ヨーロッパ系が面白い――中南米編

近い将来、作曲・演奏ともに中南米もクローズアップされる

  • 林田 直樹

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2007年9月10日(月)

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クラシック音楽の新たな震源地はベネズエラ?

 前回はアジアの演奏家がクラシック音楽界で台頭してきていることを書いた。今回は中南米の事情について触れたいと思う。なぜなら中南米もまた、クラシック音楽の新たな震源地として、今熱い注目を浴びているからだ。

 それを象徴するのが、ベネズエラで活躍するシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラと、今年26歳のベネズエラ人指揮者グスターボ・ドゥダメルである。ドゥダメルはバルキシメントというベネズエラ北西部ララ州の州都で1981年に生まれ、父はトロンボーン奏者という。12歳から地元のユース・オーケストラの指揮を始め、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラの音楽監督になったのは17歳の時だった。彼は今シーズンからスウェーデンのエーテボリ交響楽団の首席指揮者に就任、2009/10年シーズンからは名門ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督就任も決まっている。これは、経験と年齢が重視される指揮者の世界としては驚異的に早い出世だ。この事実1つとっても、いかにこの若きベネズエラ人指揮者の存在が、欧米のクラシック音楽界でセンセーショナルに受け止められているかを証明している。

麻薬や犯罪防止のための国家プロジェクトの成果

 先ごろはドイツ・グラモフォンから彼らの演奏によるベートーヴェンの「交響曲第5番&第7番」のCDが発売され、その高い音楽性、熱気、そして真実味のあふれる演奏が、世界的な話題を呼んだのは記憶に新しい。続く新譜のマーラー「交響曲第5番」はさらに素晴らしく、エリート的な演奏からは及びもつかない、まるで未熟で多感な若者が震えおののいていることがすべてマーラーの音楽にプラスに働いているかのような名演である。

 彼らの音楽は、ラトル、アバド、バレンボイムといったヨーロッパの指揮者の巨匠たちからも絶賛を浴びているが、それには背景がある。

 現在、人口2600万人のベネズエラには、全国30カ所に、約130のユース・オーケストラ、約60の子供オーケストラがあり、25万人の子どもたちがクラシック音楽に参加しているという。これらのオーケストラとそのトレーニング・システムは、実は国家ぐるみのプロジェクトによるものなのだ。クラシック音楽を演奏させることによって、貧しい子供たちを善良な市民に育成し、麻薬や犯罪から守り、社会の発展に寄与させることができる――元文化大臣のホセ・アントニオ・アブレウ博士が提唱したこの国家的運動は、「ベネズエラ青少年・児童オーケストラ全国制度財団」によって推進されている。そのオーケストラの頂点がシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラなのである。ドゥダメルは言う。

 「ベネズエラでは、ベートーヴェンはシンボルなんだ。若者たちにとってベートーヴェンの音楽は非常に重要なものになっている。すべての人にとってそうだけど、若い人たちには特に、だ」

 混迷する経済と治安の悪化に苦しむベネズエラにとって、子供たちを銃や麻薬や非行から守り、罪を犯してしまった子供たちを更生させる上で、今やクラシック音楽教育は欠かせないものとなっている。それは、プロの音楽家育成や富裕層の趣味などとは本質的に違う。そして、そのベネズエラの若者たちが演奏するベートーヴェンが、本場ヨーロッパの音楽シーンを席巻し始めている――。今識者の間では、近い将来ベネズエラ人の演奏家によってクラシック界は大きく変わっていく可能性があると、誠しやかに語られているのだ。

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