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【第11回】 武満徹の音楽に関する批評

理屈で答えの出ることしか書かない実証主義的批評の限界

  • 諸石 幸生

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2007年9月7日(金)

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 武満徹が世を去った翌年(1997年)に川口義晴さんが制作したアルバムが「武満徹オーケストラ作品集IV」である。そしてこの中に収録された作品に「弦楽器のためのコロナII」という図形楽譜による作品があった。1960年代の作曲界では珍しくもなかった図形楽譜だか、現代では使われなくなり、それは若い演奏家たちを戸惑わせるレコーディングになったという。


―― ところで「弦楽器のためのコロナII」の録音には苦労されたようですね。

「弦楽器のためのコロナII」の楽譜。武満徹さんとデザイナーの杉浦康平さんとの共同制作

「弦楽器のためのコロナII」の楽譜。武満徹さんとデザイナーの杉浦康平さんとの共同制作

川口: これは武満さんとデザイナーの杉浦康平さんとのコンビで生まれた作品ですね。図形楽譜です。ただ、ややこしいのは、この曲を武満さんは後に『ソプラノと管弦楽のための環礁』という作品の第3曲に組み込んでいるんです。それで録音するにあたってパート譜をサラベール社から取り寄せようとしたんだけれども、パート譜が付いていない。どうも散逸しているようなんです。とてもきれいな抽象画みたいなものだから、演奏するたびに演奏家たちが持って帰ってしまうらしい。僕は困り果てて、杉浦さんところへ行って借りてきて、印刷会社に頼んで作ってもらったんです。だから僕が持っているのはオリジナルではなく、コピーということになります。

図形楽譜に戸惑うオーケストラの団員

―― 図形楽譜は見たことがないという人も?

 ええ、いましたよ。1960年代とか70年代に現役やっていた演奏家は図形楽譜にも慣れていますから弾けるんです。でも、これは東京都交響楽団と録音したわけですが、みんな若いから弾き方が分からない。外山雄三さんの指揮でしたが、「川口さん、こっちに来て」って呼ばれた。行ってみると、奏者たちがどうやって演奏するのか説明してって感じです。彼らにしてみれば慣れていないから、初めてですからね。で、僕は「これは1周が1分ですから」とか、「その1分間は同じ高さの音をださなきゃいけません」とか、説明するわけです。そしてもう1つ重要なことは、同じ高さの音でも、ピチカートにするとか、弓の圧力変えるとか、ヴィブラートをかけるとかいろんなことを奏者である皆さん自身が任意に試してください、ということを説明するわけです。

―― つまり、それは絵に感じてということですね。

 そう、自由に。色に反応するように、ということですね。

―― それがこのアルバム「武満徹オーケストラ作品集IV」のトラック9ですね。

 そうです。『環礁』の場合はその第3曲に組み込まれているわけで、つまりヴィオラを除く弦楽器のパートは『コロナII』を使うように指示されている。そうやって練習を始めるでしょう、すると管楽器なんかがパーっと出てくる、クレッシェンドしてね。そうすると図形楽譜を弾いている弦の連中もそれに反応して一緒にクレッシェンドしてしまう。慣れないとそういうふうになっちゃうものなんですね。だから、僕は「それじゃダメなんだよ。図形楽譜を持っている人はそういうことしないで、譜面で感じて弾いてください」ということを言わなくちゃならない。「他のパートに反応してクレッシェンドとかディミヌエンドとかしないでくれ」って。昔の人は分かっていましたが、今の人は経験がないからね。

―― 図形楽譜って今はほとんど使いませんね。

 書いている人もうほとんどいないでしょう。だから慣れてないって言うより、知らないんですよ。

―― 一時期はトレンドだったんですけどね。

 そう、でも続いたのは15年ぐらいかな。

―― 別の曲で何かものすごくたくさんテイクをとったとか?

 『ア・ウェイ・ア・ローンII』という曲です。あの曲は技術的に難しいだけでなく、途方もなく繊細なんです。最初全体を1テイクとって、皆でプレイバックしながら検討する。そして翌日最初からやり直す。気がついたら最後はテイク50になっていました。14分足らずの曲ですよ。楽器間のバランスとか和音の移り変わりとか、本当に繊細なんです。たぶん武満さんの80年代の最高傑作と言っていい。矢部達哉さんがコンサートマスターだったけど、よく我慢してあの細かい楽譜に集中してくれた。あの時のメンバーは本当に素晴らしかった、感謝しています

テイクが50回目と記した『ア・ウェイ・ア・ローンII』のスコア。結局、51回目の録音でOKがでた

テイクが50回目と記した『ア・ウェイ・ア・ローンII』のスコア。結局、51回目の録音でOKがでた

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