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空気が読めない醜いアヒルの子~『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』
森達也著(評:朝山実)

集英社新書、700円(税別)

2007年9月10日(月)

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『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』

王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』森達也著、集英社新書、700円(税別)

評者の読了時間4時間30分

 「幸福の王子」のお話を、覚えていますか?

 困っている人たちを助けるために、きらびやかな銅像の王子が、身体に付けられた装飾品を一つひとつ施していく。動けない王子に代わって「使者(パシリ)」を務めるのが、イヤと言えない一羽のツバメ。王子の善行の手助けをするうち、ツバメは冬を迎え、凍え死にしてしまう。

 本書は、このような子供の頃に誰もが親しんだ童話や昔話を、十分に世間を体験した目で読み直してみようという企画だ。

「桃太郎」から「美女と野獣」「蜘蛛の糸」まで、全部で15話。表題のように、主人公のその後を綴るなど、エッセイと創作の間をゆく、宙ぶらりんさが特色をなしている。

 冒頭の王子とツバメの話で、ワタシは小学校の国語の時間の記憶がよみがえった。お決まりの感想文を求められたのだ。

〈王子はどうして、ツバメを死なせてしまったのか。ツバメを殺したのは王子だ。だから、王子が嫌いになり、銅像が壊されたときには、スッとしました〉

 「感じたままに書けばいいから」の言葉を真に受けて、思ったままに書いて提出したら、放課後、教室に居残ることになった。黒板を背にした女教師の眉の間には、深い縦皺ができていたし、哀れむような目をしていた。ツバメを見つめる王子も、きっと同じ目をしていたのだろう。

 著者はこの「幸福の王子」について、原作のナゾを埋めるように書き足していく。

これでいいのか、この王子

 ツバメがお使いを務めるたび、王子はみすぼらしくなっていく。ここまでは、よく知られたお話だが、著者はこんな場面を書き加えていく。

 あるときツバメは、王子に問いかける。自分を犠牲にしてまで、多くの人を救おうとするのは、どうしてなのか? ツバメは思ったままを口にする。「そうすることがあなたにとって気分がいいからでは……」。

 穏やかだった王子はカッとして、ツバメの話を遮る。自分のためなどという、つまらない動機ではない、と熱弁をはじめる。ツバメは、口では太刀打ちできるはずもなく、無言となる。

 どんどんどんどん、身なりは貧相になる王子。しかし、態度は稟として堂々としたもの。いっぽう、過激な自己犠牲の善行に合点がいかないツバメは、悩みを訊いてもらうべく、作者であるオスカー・ワイルドの書斎を訪れる。

 王子の「善意の心情」は疑うべくもない。ツバメが王子の説明に納得しきれず「微妙に違う」と思ってしまうのは、行為の善し悪しではない。王子の行いに「陶酔」を見抜いてしまったからだ。

 一直線な善意というものは、しばしば周りの人に迷惑をかけてしまうことがある。事実、越冬のタイミングを逃したツバメは凍死。

 取り壊される寸前、王子は幸せな表情を浮かべていたとオスカー・ワイルドは綴っているが、パシリツバメにしてみたら傍迷惑な物語である。

 ここで読者の幾人かは、危険地帯にボランティアに出かけていく人たちを王子に重ねてみるかもしれない。あるいは「感動」に茶々を入れる、ひねくれ者としてお叱りになるのかもしれない。いずれにしろ、著者の翻案には、微妙な居心地の悪さがつきまとう。

 「赤ずきんちゃん」に対しては、こんな疑問からはじめている。

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