
『労働CSR入門』吾郷眞一著、講談社現代新書、720円(税別)
2時間10分
隙あらばグローバルスタンダードという基準を作り、あたかも十字軍になったかのように、その普及と宣伝に努め、そこから外れるものは容赦なく切り捨てる。米国の典型的なやり口だ。企業経営の分野では会計基準や企業統治の仕組みがそうやってスタンダード化したが、我々の多くが気づかないところで、もうひとつの事態が進行している。それが本書のテーマ、「労働CSR」である。
CSRとは、ご存じ、Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任であり、労働CSRとは、年端もいかない児童を雇用することや、たとえ成人でも強制的あるいは差別的待遇のもとで働かせるといった、労働分野での人権を侵害せずに、日々の企業活動を行うことを指す。
その内容自体には問題はない。むしろ、歓迎すべきじゃないか、と万人が思うだろう。問題の本質は、それを推進し、各企業にお墨付きを与えるのが米国の民間認証機構という点なのである。
ILOと労働CSRの差
なぜ民間の認証機構が労働CSRに関わることが問題なのか。2つ理由がある。まずは、それらが単なる私的団体に他ならないからだ。何を根拠に「認証」を行うのか、その基準は恣意的としかいいようがない。
そのためだろう、民間認証機構が依拠する基準には、ILO(国連の専門機関である国際労働機関)条約がそのまま引用されることが多い。「それはILO条約に対する誤解に基づく」と、過去にILOでの勤務経験がある著者はいう。
最も大きな誤解は、ILO条約が政労使3者の合意によって制定され、法としての正当性をもつのに対して、民間団体が進める労働CSRはそこまでの正当性がないという点である。自分たちがいいと思う基準を勝手に定め、自主的に適用しているだけなのだ。これはILO条約を骨抜きにすることにもつながってしまう。
例えば、認証機構が児童労働の禁止を認証基準とし、その根拠にILO条約を引用したとする。
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