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今最も期待される日本人指揮者

劇場の中だけで音楽を完結させる時代は終わったのです

  • 伊熊 よし子

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2007年9月19日(水)

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 今、最も勢いのある指揮者と言われ、オペラとシンフォニーの両面においてヨーロッパで大活躍を続ける大野和士氏。2002年8月より、ベルギーのブリュッセルにあるベルギー王立歌劇場(通称モネ劇場)の音楽監督を務める彼は、耳の肥えたヨーロッパ聴衆と批評家から大きな期待を寄せられている。

 大野氏がモネ劇場の音楽監督に就任してから、早5年が過ぎた。この間、オペラの指揮のみならず、あらゆる面で劇場の仕事にかかわってきた。そのなかで一番学んだことは「21世紀の劇場のあり方」だという。

 「私がこの5年間で劇場から学んだことは限りなく多いですね。最も大きなウエートを占めているのが、“劇場の社会に対する貢献度”です。現在、ヨーロッパの劇場の多くが21世紀の劇場のあり方を模索し、劇場の価値をどこに見いだすかということを自らに問いかけている。そして様々なプロジェクトを考え出し、実践し、劇場と人々を結びつける努力をしています。ヨーロッパではクラシックを聴く層の年齢がどんどん上がっている。このままでは劇場は生き残れません。その危機感にいち早く気づき、手を打たなくてはならないのです」

様々な人と出会い、自分の役割を真剣に考えるようになった

 大野氏は決して雄弁なタイプではないが、この話題になると口調は滑らかになり、言葉が次々とあふれ出てくる。

歌劇場の社会的貢献について真摯に語るベルギー王立歌劇場の音楽監督、大野和士さん

歌劇場の社会的貢献について真摯に語るベルギー王立歌劇場の音楽監督、大野和士さん(撮影:清水健、以下同) 協力:梶本音楽事務所、Bunkamura

 「劇場の中だけで音楽を完結させるという時代は終わったのです。こちらから飛び出していって音楽を提供する、何かを実行する組織を作らないとならない。体が不自由で劇場に来られない、とても貧しくてチケットが買えない、そういう人々に私たちが手ほどきをして、合唱する喜びを知ってもらったりする活動をしています。劇場を、子供たちに毎日開放して、劇場の様々な日常を垣間見てもらう。子供用の“アイーダ新聞”や“ドン・ジョヴァンニ新聞”を作ってあらすじを紹介したり、聴きどころを分かりやすく解説したり。制作現場の見学も行っています。また、ごく最近の試みとしては、終身刑を受けた受刑者が、1年のうち何日か、独房を出ることが許される日に合わせ、オーケストラのメンバーが刑務所に出向いて彼らに楽器の手ほどきをしたり、また合唱を指導したりして、発表の機会を作ったりする」

 「私も、できるだけそれに関わり、劇場支配人にリポートを提出したり、次なる企画を考えます」

 「音楽とは縁のなかった人たちが、私たちが積極的にいざなうことによって、生きる喜びを見いだしてくれたら、と願っています。これは、モネ劇場の日本公演でも紹介しましたが、子供たちが、衣裳を着けてオペラの抜粋を歌い演ずるという企画もあります。これは、年間およそ80もの異なるキッズ・プログラムとして特に人気が高く、今は応募数が多すぎて、すべての要望に応えきれないほどになりました。彼らが大人になった時、劇場の定期会員になってくれたらいいのですが……。モネ劇場は、音楽家としての私に新しい使命感を与えてくれました。様々な層の人と出会い、音楽とは何か、自分の役割とは、など、より具体的に真剣に考えるようになりました。劇場と聞いただけで、何かおもしろいことをやっている、わくわくするような場所だ、と思ってもらいたい。音楽で人生を豊かにする、そういう人が少しでも増えてほしいと思います」

 ヨーロッパの劇場に携わる人々は、今やあらゆる方面にアンテナを広げ、斬新な映画を制作した監督に演出を依頼したり、ノーベル文学賞を受賞した作家に台本を依頼したり、現代アートの作者に振り付けを依頼するなど、様々なことをしているそうだ。

 「先日、興味深いことを聞きました。ある劇場がヒップホップの音楽を演奏する若者たちに、劇場の屋上階の広間を練習場として開放したんです。彼らは町中で練習するとうるさがられたり、嫌がられるため、喜んで劇場内で練習していた。そうしたら、このグループがヒップホップの世界大会で優勝してしまったんですよ。途端に町の誇りとなったというわけです。これこそ、オペラと他分野を結びつけたいい例ですよね。モネ劇場も真似しようかな(笑)」

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