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芸術は「理論」で見ろ~『知識無用の芸術鑑賞』
川崎昌平著(評:栗原裕一郎)

幻冬舎新書、720円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2007年9月14日(金)

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評者の読了時間3時間00分

「現代美術なんてガラクタだ」

『知識無用の芸術鑑賞』

知識無用の芸術鑑賞』川崎昌平著、幻冬舎新書、720円(税別)

 石原慎太郎東京都知事は、おおよそそんなようなことを言い放ったのだった。2006年4月に東京都現代美術館(MOT)で催された「カルティエ現代美術財団コレクション展」オープニングでの出来事。現代美術の粋を集めたと鳴り物入りの展覧会であり、カルティエ財団のお偉いさんも参列していた。「会場内には衝撃が走った」と仏リベラシオン紙は伝えた。

 そりゃ走るわなあ。都知事選に出馬して「この国は最悪だ! 選挙なんて無意味だ!」とアジった外山恒一みたいなもんだもんなあ(違うか)。

 ネットなどでは当然、批判が出たが、「説明されないと何のこっちゃわからないなんて芸術としてダメだろう」という石原に快哉を叫んだ人も少なからずいたのではないか。「現代美術」が「わかる」とうたった本がけっこうコンスタントに出版されているのは、「現代美術って意味不明」とひそかに考える人がつねにそれなりの数いることの証左であるわけだから。

 ところで、なにげに書いている「美術がわかる」というフレーズ、これには「美術って“わかる”もんなの?」という疑問めかした反論が付随している。その裏には、「美術とは“感じる”ものだ(であるべきだ)」という素朴な感性至上主義がある。

 「わかる」と「感じる」は、重なる部分がないわけじゃないとはいえ、基本的には相反する事態である。そして、どっちかというのであれば、今日、美術は、とりわけ現代美術は、圧倒的に「わかる」ものであるといわざるをえないだろう。

 しかし「わかる」とはどういうことか?

作品“だけ”で判断する

 思いきり端折ると、美術というものの歴史だとか、過去に蓄積された評価だとか、(鑑賞という行為もふくめた)美術という制度だとか、社会的な文脈だとか、そういう一切合切をふまえたうえで価値判断すること、である。

 知識を溜めこんでリクツを捏ねたり、ウンチクを垂れたりすることを要求されてしまうと、そういうことですね。たとえば、デュシャンの「泉」(この本でも取り上げられている)は、男性用小便器というそこらにある日常品を美術館に持ち込み作品として展示することで、美術館という制度が無自覚にはらんでいるイデオロギーを露わにした、とかなんとか。

 若き芸術家である著者は、そんな解釈ゲームは不毛なだけだと、知識に依らない芸術鑑賞の仕方を提案、58作品(有名作品とそうでもない現代作品が半々くらい。音楽や映画その他もいくつかふくまれる)を具体例に実践してみせる。

 「芸術に対して知識を深めることは、かえって芸術の本当の魅力から遠ざかる行為なのではないか」と考える著者が訴えるのは「経験による思考」。「経験」とは、実際に作品に面と向かい、作品だけからデータを得ることである。

 ポイントは、「知識」の対極に置かれているのが、「感性」ではなく「経験」であるところ。「感性」とかいっちゃうと石原みたいに「美しくないからダメ」という話になってしまうわけだが、感性っつーのもまた社会的歴史的に構築されたものにすぎないから、じつのところ、リクツやウンチクと大差がない。

 では、「経験による思考」に必要なものは何か?

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