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季節の終わりはラオスに行って虫を採ろう

2007年9月19日(水)

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 八月で梅雨明け、採集の季節が終わってしまった。あとは標本を調べるしかないか。

 イヤイヤ、外国に行くという手がある。

 去年(2006年)は九月にタイのコンケンに行った。名古屋の林昌利さんが、何年も前から一緒に虫採りに行こうといっていた。はじめてそれが実行できたのである。コンケンはタイ東北部、その林さんが見つけた採集地である。林さんはタマムシがとくに好きで、毎年東南アジアに虫採りに行く。今年はご自身の著書が出た。たまたま日経BPの柳瀬さんたちが絡んで、私が雑誌に連載していた虫採りの話が、雑誌広告賞を取った。そのご褒美に、日経の人たちもタイに行けることになった。そこでみんなで仲良くコンケンに行った。

 九月のタイはまだ雨期で、コンケンにはクチブトゾウムシ類が腐るほどいた。なんでもない環境で、日本でいえば、田舎の雑木林だった。だから珍品がいたわけではない。同じ種類がたくさんいたのである。やや正確にいうと、六属十数種のクチブトゾウムシが同じ山で、二日間、午前中の二時間ほど、木の葉を叩くだけで採れた。種の数が正確に出せないのは、同種かどうか、まだわからないものが混ざっているからである。

 じゃあ、ほかの虫がいたかというと、あまりいなかった。ただし林さんはこの山でタマムシを採る。ミドリフトタマムシがたくさんいるからである。

 このときは、帰る前日がクーデターだった。でもコンケンのような田舎には、なんの関係もない。バンコクまでの道路で戦車を数台、見かけたていどである。

 そのあと、今年(2007年)の三月には、池田清彦とラオスに行った。ラオスでは、九月のタイにいた種類と似たもの、違うものが、少しずつ採れた。滞在期間も採集時間もラオスのほうが長かったのに、クチブトゾウムシについては、種数も個体数も九月のコンケンに及ばなかった。

ラオスのさまざまな虫

ラオスのさまざまな虫


 ゾウムシ採りなら、雨期のほうがはるかに能率がいい。それだけの経験で、とりあえず勝手にそう結論した。ロンドンの自然史博物館でキュレーターをしているマックス・バークレーが、そういえば数年前にタイに行くといっていた。いつ行くんだと訊いたら、九月だという。秋はダメじゃないかと思ったが、あとでどうだったかと聞いたら、たくさん採れたといっていた。やっぱり秋がいいらしい。

 いままでは、もっぱら日本の春に行くことが多かった。カミキリ屋、蝶屋のいうことを聞いていたからである。ゾウムシはカミキリでも、チョウでもない。何年か、ムダにしてしまったではないか。今年はもっと遅い時期に行くことにしよう。ということで、今年はお盆の時期に、ラオスとタイに行くことに決めた。ラオス在住の若原弘之君に、七年前に現地の案内を頼んだから、今度も若原君に頼んだ。

 今年の三月には、「ラオスの蝶人」ということで、新潮社の足立真帆さんと若原君自身の取材をした。そのいきさつは新潮社の「考える人」に載せてある。その時に、この八月にもう一度ラオスに来たいと、若原君にいっておいた。帰国してからもメールでちゃんと連絡したが、なにしろ奥地の山ばかり行っている人だから、返事がない。メールなんか、ほとんど読まないらしい。

 それとはべつに、去年も一緒にタイに行った名古屋の林昌利さんが、今年も八月にタイに行こうという。両方をくっつけて、17日から21日までラオス、22日から26日までタイという、欲張った予定を立てた。

 ところが若原君から返事が来たのが、なんと八月に入ってから。「待ってる」という。三月から八月まで、ナシのつぶてだったんですよ。ラオス行きは半分以上あきらめていたが、慌てて旅行社に確認したら、バンコク―ヴィエンチャン間の切符は取れるという。バンコク行きの切符は取ってある。それならむろん行く。それでまずラオスに飛んだ。むろんタイにも行く。

 三月のラオスは暑くて、三十五度くらいになった。八月に来ても相変わらず暑い。しかし出てきた東京は四十度近く、まあラオスのほうがいくらかマシかというていど。旅程は若原君まかせだが、あらかじめ普通種を採りたいといっておいた。ヘソ曲がりのようだが、ゾウムシはよくわかっていないグループである。こういうものについては、その土地にどういうゾウムシがふつうにいるか、それをまず知らなければ話にならない。

 どれだけ採れば、ラオスでふつうのゾウムシが、ほぼ採れたことになるのか、それはわからない。ともあれ何回か採集に行って、そのつど採れるものなら、普通種であろう。また何百と採れるものも、普通種というしかない。はたしてそれが何種類くらいあるか。それはよくわからない。

 一口にゾウムシといっても種類が多い。昆虫のなかでいちばん種類数が多いのが甲虫、そのなかでも、いちばん種類数が多いのがゾウムシ。しかも生息場所がいろいろである。いくら普通種でも、ゾウムシ全体のチェックはとうていできない。だからクチブトゾウムシ類に対象を絞ることにした。これは葉っぱの上にいるから、調べやすい。日本で調べているヒゲボソゾウムシに似た生態を持っているので、いろいろ見当もつけやすい。そのヒゲボソゾウムシのほうは、東南アジアの熱帯にはいない。だからヒゲボソの代わりにクチブトを採ろうという算段である。

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「季節の終わりはラオスに行って虫を採ろう」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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