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かっとばせ、中流の不安~『ベースボールの夢――アメリカ人は何をはじめたのか』内田隆三著(評:山本貴光+吉川浩満)

岩波新書、740円(税別)

  • 山本 貴光,吉川 浩満

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2007年9月18日(火)

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評者の読了時間2時間00分

『知識無用の芸術鑑賞』

ベースボールの夢――アメリカ人は何をはじめたのか』内田隆三著、岩波新書、740円(税別)

 アメリカで older than baseball と言えば、「とても古い」という意味になるらしい。かの地で「国民的ゲーム」と言われるこのベースボール、いつどこで始まったのか。

 いくつかの説がある。

 アブナー・ダブルデーなる南北戦争の軍人が、1839年にニューヨークのクーパーズタウンで始めたのだ。いやそれはつくられた神話で、そもそもこのゲームの原型はイギリスのラウンダーズというゲーム。つまりイギリスが発祥の地だ。しかしより直接的にはアメリカでタウン・ボールというゲームにアレキサンダー・カートライトという人物が手を加えてできたのが今日のベースボールである。なあに、もっと遡れば18世紀半ばにイギリスで刊行された子ども向けの本に Base Ballというゲームが登場しているよ。

 いずれもベースボール史でしばしばお目にかかる起源説だが、「ずばりこれが起源だ」と断定するにはまだ不明の点も多い。

 そもそも一口にベースボールと言っても、そのルールは時代や地域によってさまざまに変化してきた。たとえば、攻守の交代は最初から3アウト制だったわけではなかったし、ゲームの終了条件もかつてはイニング数ではなく得点数で決まっていた。

 だから、なにをもってベースボールの本質と考えるかによって、その起源を求める先もおのずと変わってくる。ここにベースボールの歴史をたどる難しさと面白さがある。

 さて、本書もまたそんなベースボールの歴史を追跡する書物なのだが、問題設定がちょっとその辺の類書とはちがっている。本書は、ベースボールの起源や1920年代頃までの変遷をたどるスポーツ史であると同時に、その背景となったアメリカ社会の状況をも視野に収めようという社会学の試みでもあるのだ。

フロンティアが消えて「ベースボール」が生まれた

 当然のことながら、ベースボールは複数の人びとによる社会的な営みだ。とりわけ本書が対象とするのは、アメリカでベースボールがプロ・スポーツとして、つまりビジネスとして制度化されてゆく過程。もはやゲームとはいえ、参加者たちの運動と気晴らしという次元にとどまらない。

 たとえば、ベースボールがビジネスとして成立するためには、選手に加えて、球団を経営する組織、そしてなによりも観戦にお金を払う観客が必要だ。試合や選手について報道する新聞その他メディアの働きも無視できない。

 少し考えただけでも、ベースボールという営みには、さまざまな要素が重層的に絡み合っていることがわかる。だとすれば、ゲームそのものだけではなく、その社会的背景を検討するにしくはない。ベースボールの見え方だっていっそう味わい深くなろうというものだ。

 アメリカでベースボールがいまのような形で組織化され、普及し始めたのは、19世紀半ばのこと。社会的に見れば国内を二分して戦われた南北戦争(1861-65)の終結から国を再統合していく過程、産業資本主義が急速に発展する時期に重なっている。

 1869年には大陸横断鉄道が完成し、19世紀末にはもはやそれ以上開拓すべき西部、フロンティアがなくなった。その一方で、地方に分散する従来のスモールタウンを基盤とした社会から、産業の発展に伴って大都市に人口が集中する社会への転換期を迎える。

 こうした「社会過程」のなかで、ベースボールは「アメリカ生まれ」という神話を与えられ、「国民的ゲーム」という地位を獲得していくのだが、これが胡散臭くも興味深い。

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