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(10)マンション管理の「不思議なからくり」を打破する手がかり

  • 山岡 淳一郎

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2007年9月19日(水)

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 夏の宵、団地の中庭に勇壮な掛け声とともに神輿が入ってきた。

 「ワッショイ ワッショイ」。町内を練り歩いてきた人々の顔は紅潮している。

 京都市伏見区の私鉄沿線に立地する「ファミール伏見」。築35年、3棟、280戸の高層マンションである。外観はごくふつうの郊外型団地なのだが、住民間に見えないセーフティネットが張られている。地道なコミュニティ活動が、夏祭りでひときわ燃え上がる。

「六甲下ろしにぃ 颯爽とぉー 蒼天かけるぅ 日輪のぉー」

 子どもたちがステージで自慢のノドを披露する。出番を待つ親父バンドの面々が、笑顔で見上げている。お好み焼きにカキ氷、生ビール、おでん、タコせん……屋台の料理は、すべて住民の手づくりだ。午前中から徹底的な衛生管理のもとで料理を仕込んだ。
団地の夏祭りは、30年以上も前、子どものために近くの寺からお地蔵さんを借りてきて「地蔵盆」として始められた。

 団地から子どもが次々と巣立ち、大人の占める割合が高まるにつれ、老若男女を対象とする現在の形が出来上がった。「ふるさと」の輝きを取り戻した団地の夏祭りを、しかし私は美談として語ろうとしているのではない。

 実は、住民の緊密なつながりが資産価値にも反映されているのである。

 ファミール伏見では、ゴルフ、ソフトボール、ボウリング、カラオケ、旅、懇談、写真、読書に防犯パトロール……と、多種多様の小集団が日常的に活動している。毎日、必ず、何かの集まりが催されている。住民どうし顔を合わせれば、あそこでもここでも立ち話。 

 そこに春夏秋冬の行事が加わり、顔と顔をつなぐ人間関係の毛細血管が張り巡らされている。何かあれば、必ず誰かが駆けつけてくれる。そんな安心感が高い資産価値を支えている。

 事実、分譲時780万円で売りに出された3LDK70平方メートルの平均的な住戸が、リフォーム済みで1300万円。街の不動産仲介業者の空き待ちリストには入居希望者がずらりと名を連ねる。年代物のワインのように熟成されたコミュニティが、安全、安心の砦として高い評価を得ているのだ。

 ファミール伏見は「資産価値とは何か」もう一度、考え直すきっかけを与えてくれる。

 そもそも良いマンション、幸せに暮らせるマンションとはどのようなものだろう。

「幸せな」マンションとは

 過去、マンションブームは、7~8年おきに4~5回繰り返されてきた。建築の専門家たちは「ブームのさなかに建てられたマンションは買うな」と言う。工期短縮の圧力の下、専門工事業者や職人の確保が難しくなり、施工の質が落ちるからだ。一方でマンションのコマーシャルは夢に溢れたイメージを流し続け、いま買わないと損をするかのように煽りたてる。確かに住まいの立地や建物の安全性、利便性は重要だろうが、それだけで人間は幸せに暮らせるのだろうか。

 誰もが、自分のマンションの価値を長く維持したいと願っている。しかし歳月の流れは正直だ。最初は美しく輝いているマンションも、時を経て徐々に建物が傷み、設備にも不具合が生じる。ピカピカの超高層マンションも、10年経てば、屋上防水や外壁の塗装を直す「大規模修繕」が迫ってくる。住民でつくる管理組合の腕の見せ所となる。

 住民も齢を重ねれば、高齢者の一人暮らしが増える。マンションとして医療や介護、福祉との向き合い方が問われるようにもなる。

 ファミール伏見でも高齢化は進む。地元の社会福祉協議会と提携し、高齢者住民向けの食事会を開いている。互いの安否確認は欠かせない。集会場はバリアフリー化し、車椅子が使えるスロープを設置した。高齢者住民の互助組織「寿会」のメンバーは語る。

「実は20年ほど前、孤独死が発生しました。これではいかん、と皆がお年寄りに目を向けるようになった。最近、団地にいる二十数名の独居老人を見守るチームを編成しました。若い奥さんたちが声かけしています。集会所を改築したサロンでデイケア食事会も開く。管理組合や自治会のオフィシャルな活動だけではダメなんです。日常的に住民どうしが接触する機会をたくさんつくることが大切なんですよ」

 良いマンションの隠れた第一条件は、時の流れを受けとめる「親和力」を備えていることだ。親和力とは、親しみ合って仲のよい気分になれる力。この必須条件に目覚めたマンションだけが、次の時代に残ることができる。

 では「親和力」のあるマンションをどうやって選べばいいのか?

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