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少子高齢化について語るなら必読~『人口学への招待』
河野稠果著(評:小田嶋隆)

中公新書、860円(税別)

2007年9月21日(金)

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評者の読了時間4時間00分

人口問題への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか

人口問題への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』河野稠果著、中公新書、860円(税別)

 小学校で習った時、世界の人口は、たしか、34億人だった。この記憶はたぶん間違っていない。少なくとも、小学生の段階では、私は秀才だったから。

 その後、人口は約40億人ということになった。高校で習ったのか、新聞で読んだのか、あるいはテレビか何かで聞きかじったのか、正確なところはわからない。いずれにしても、その頃、私は既に秀才ではなかった。

 最新の統計によれば、現在、世界の人口は65億人を超えている。びっくりだ。私の記憶は、40億人時代以降、俄然曖昧になっている。要するに、ある時期から、私は人口の推移に注意を払わなくなり、50億人を超えた時期さえしかとは把握しないまま、この20年ほどを過ごしてきたわけだ。

 私に限らず、現代の日本人の多くは、世界人口の推移や、自分の国の人口構造の詳細について、さしたる情報を持っていないと思う。せいぜい総人口を記憶している程度。要するに、無知なのだ。

 無知それ自体はたいした問題ではない。ただ、正確な知識を持たず、有効な情報を把握していないにもかかわらず、その貧弱な記憶をもとに現状分析を試み、のみならず、未来予測をやらかし、あろうことか、少子化問題について、あれこれと解決策まで提示しているわたくしどもの態度は、これはちょっと問題だと思うのである。

「41歳死亡説」を覚えているか?

 この春、結果的に安倍政権の寿命を縮めることになった柳沢厚労相による「女性は産む機械」発言をめぐるやりとりを、あらためて振り返ってみても、あの事件について発言した人々の中で、非婚化や合計特殊出生率についてマトモな議論を展開した者は、ほとんどいなかった。ただ、比喩として「機械」を持ち出した大臣の無神経を問題視するのみで、誰も人口学について突っ込んだ議論をしようとはしなかったのである。

 結局、われわれは、比喩の無神経さには敏感でも、人口問題の具体的な諸相については、ほとんどまったく無自覚なのだ。

 本書は、そんな、われわれが苦手としている人口学についての基礎的なデータを提供してくれる好著だ。一通り目を通しておけば、現在語られている人口をめぐる諸問題(人口構造の転換、人口分布、人口移動、少子化、高齢化、低出生率、晩婚化、非婚化、セックスレス、ジェンダーなどなど)について、概括的な理解が得られるはずだ。

 いま、「概括的」という言葉を使ったが、実のところ、本書で触れてある以上の深い論議がメディア上で展開されているケースには、まずめぐりあえない。

 本書を読んだあとで、マスコミの中で語られている人口談義を見回してみると、議論の浅薄さにびっくりさせられる。結局、われらパンピーだけではなく、政治家やジャーナリストを自称している人々も、こと人口問題については、新書一冊分の基礎知識さえ持っていないのだ。

 死んだデータや古くなった学説が世間に流通しているケースは、枚挙にいとまがない。

 本書の中でも、いくつか、そうした「妄言」が紹介されている。

コメント1件コメント/レビュー

この本を読んでみようと思う。基本的に少子化は望ましいと考えている。あれこれ難しい理由より、本能的に動物として当然の選択と思うからだ。冒頭に書かれた世界人口のすさまじい増加を見れば、これ以上人間を養える資源も食料も地球にない。日本も同様だ。少子化が結構なことだというと「無責任」と叫ぶ人がいるが、今までと同じ調子で人口を増やし続ける方が無責任だし、とうてい無理なのだ。エコロジーの根本は人口を増やさないことだろう。日本の今の問題は、人口のアンバランスにある。特にこの先30~40年ほどの。今からせっせと子どもを産んだところで、来年生まれた子どもが税金を納め、社会をささえられるようになるまで四半世紀かかる。高齢化のピークが終わるころだ。はっきり言って、突出して人口の多い団塊世代がすべて亡くなってしまえば、超高齢社会は終わるといってもいい。人口ピラミッドすら一度も見たこともなく人口問題について発言している人がいる…、というのは確かだろう。あれをみれば、少子高齢化はアンバランスの問題だと誰でもわかるはずだ。(2007/09/21)

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「少子高齢化について語るなら必読~『人口学への招待』
河野稠果著(評:小田嶋隆)」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

この本を読んでみようと思う。基本的に少子化は望ましいと考えている。あれこれ難しい理由より、本能的に動物として当然の選択と思うからだ。冒頭に書かれた世界人口のすさまじい増加を見れば、これ以上人間を養える資源も食料も地球にない。日本も同様だ。少子化が結構なことだというと「無責任」と叫ぶ人がいるが、今までと同じ調子で人口を増やし続ける方が無責任だし、とうてい無理なのだ。エコロジーの根本は人口を増やさないことだろう。日本の今の問題は、人口のアンバランスにある。特にこの先30~40年ほどの。今からせっせと子どもを産んだところで、来年生まれた子どもが税金を納め、社会をささえられるようになるまで四半世紀かかる。高齢化のピークが終わるころだ。はっきり言って、突出して人口の多い団塊世代がすべて亡くなってしまえば、超高齢社会は終わるといってもいい。人口ピラミッドすら一度も見たこともなく人口問題について発言している人がいる…、というのは確かだろう。あれをみれば、少子高齢化はアンバランスの問題だと誰でもわかるはずだ。(2007/09/21)

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三品 和広 神戸大学教授