『雲の発明 気象学を創ったアマチュア科学者』 リチャード・ハンブリン著
ちょっと不思議なことに思えるのだが、古代中国でも、古代ギリシャでも天空を観察する人たちはたくさん居たはずだ。彼らは星を見て精密な観測をした。太陽も、月も星々も観察の対象だった。でも、誰も彼もが雲を見逃していた。
夕方の雲を見ることで、翌日の天気が予想できた。黒雲が険悪な厚みを見せるとき、まもなく豪雨と雷が来るぞ、と予測が出来る。これを観天望気といって、特に海で働く男たち、あるいは登山家などがいつも実践していることである。
ところで、何が不思議かと言えば、そういった雲に固有の名前が付けられたのは19世紀初めのことだという。
本書は雲を分類し、それぞれに固有の名前を付けた男の物語。化学の基本は物質の普遍的な分類と、呼び名付けである。そして、それは地球上のどこでも等しく同じ性質、形状を持たなくてはならない。驚くのは18世紀に至るまで、だれも雲というものを分類し、名前を付けようとしなかったこと。
われわれは積乱雲、巻雲、筋雲、高層・低層雲など、空を見上げるだけで雲の呼び名がたちどころに分かる。
18世紀の初頭、ルーク・ハワードという無名のアマチュア科学者が、ロンドンの科学講演会で、雲の発生の理論と、雲の分類、呼称についての発表を行った。今まで誰もが見過ごしてきた、雲というものに科学の目が向けられるようになった。新しく誕生した科学は気象学である。計測と観察を最大限に要求する科学の分野だった。
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