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第6回 ベートーヴェンとロッシーニ

ほっぺたが落ちそうになる逸品、ロッシーニ風オムレツ

  • 水谷 彰良

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2007年9月25日(火)

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 トリュフとフォアグラをこよなく愛し、料理の創作に情熱を注ぎ、世界各国の銘酒とともに美食三昧の日々を送ったロッシーニ。成功者の特権と言えばそれまでだが、少年期にボローニャの豚肉屋に寄宿させられ、肉屋の主人になるのが夢だったというから、やはり筋金入りの食通なのだ。「ロッシーニが毎日20枚ビフテキを平らげ、すごく太っている」とスタンダールの書簡(1820年12月22日付)に書かれているから、ロッシーニは28歳の若さで周囲も驚く大食漢になっていた。

 ならば、同時代の有名作曲家はどんな食生活を送っていたのだろう。ここで寄り道して、ベートーヴェンの食卓を覗いてみよう。

質実剛健なドイツ人気質のベートーヴェンの食生活

ベートーヴェンの肖像画

ベートーヴェンの肖像画

 ベートーヴェンと親しくつき合い、寝起きを共にしたこともある指揮者イグナツ・フォン・ザイフリートによれば、楽聖の好物はパンをどろどろに煮たスープで、生卵を割り入れ、かき混ぜて食べていたという(『ベートーヴェン研究』1832年)。独身のベートーヴェンは家政婦に料理をしてもらっていたが、かんしゃくを起こして追い出すこともしばしば。そんな時は自ら市場に出向き、値切りに値切って一番安い食材を仕入れ、嬉々として自炊した。ある日彼は、「料理という高貴な芸術に素晴らしい知識を持つ証拠を見せてやろう」と豪語して友人たちを招いたが、出てきた料理は「宿屋の残飯を連想させるスープ」と「煙突で燻(いぶ)したような焼肉」だったという。弟子のシンドラーによれば、ベートーヴェンはスープのほかに、ジャガイモを添えた焼き魚、仔牛肉、パルマ産チーズを添えたマカロニも好物だった。酒は「オーフェン」というハンガリー・ワインを好んだが、普段は安い混合酒をがぶ飲みし、それが原因で腸を悪くしたという。夕方ビールを1杯グッとやるのが好き、との証言もあるが、これではそこらのオヤジと変わらない。

 食生活の点では明らかに悪食のベートーヴェン。だが、彼は質実剛健なドイツ人気質の持ち主で、食に代表される現世的快楽よりも芸術的理想を追求するロマン主義的人間だったのである。その対極にあるのが「食べ、歌い、恋する」快楽主義のラテン気質。その意味でもロッシーニとベートーヴェンは正反対の人間だった。

ロッシーニの卵料理、トリュフとフォアグラが不可欠

 「ロッシーニ風」の名称で流布した料理の中で、一定の割合を占めるのが鶏卵を用いた料理である。種類としては、目玉焼き、半熟玉子、落とし玉子、炒り玉子、オムレツであるが、そのどれにもトリュフとフォアグラが不可欠だから材料費がかかる。

 一番簡単そうな「ロッシーニ風目玉焼 Œufs Rossini sur le plat」のレシピは、「フライパンで目玉焼きを作り、丸型の型抜きで黄身を中心に抜く。それをバターでソテしたフォアグラの丸い薄切りの上に盛り、薄切りトリュフ1枚を黄身に載せ、十分に煮詰めたマデイラ・ワイン入りドゥミ=グラス・ソースを紐状にかける」というもの。そこまでして目玉焼きを食べるか!と呆れる人は、美食の何たるかを知らないのだ。単純な料理にも匠の技は欠かせない。本物の「ロッシーニ風目玉焼き」は、腕の良いシェフによってのみ真の美味たり得るのである。

 同じことは他の卵料理にも言える。「ロッシーニ風オムレツ Omelette Rossini」もレシピ自体は何の変哲もないから、どんな仕上がりになるか想像もつかないだろう。

●ロッシーニ風オムレツ

 フォアグラとトリュフのサルピコンを卵に加えて溶きほぐし、普通にオムレツを作る。ソテしたフォアグラの切り身とトリュフの薄切りを付け合わせる。マデイラ酒入りのドゥミ=グラス・ソースを紐状にかける。
ふんわりとした黄色の卵ベースにダイス状の黒トリュフと薄桃色のフォアグラ。実に贅沢な料理だ 撮影:小川玲子 制作協力:Chez Inno(シェ・イノ)

ふんわりとした黄色の卵ベースにダイス状の黒トリュフと薄桃色のフォアグラ。実に贅沢な料理だ 撮影:小川玲子 制作協力:Chez Inno(シェ・イノ)

 ところが優れた料理人の手にかかると、見ただけで垂涎(すいぜん)、ほっぺたが落ちそうになる逸品が出来上がる(写真参照)。ふんわりとした黄色の玉子ベースにダイス状の艶やかな黒トリュフと薄桃色のフォアグラがふんだんに盛り込まれ、その上に香ばしく焼かれたフォアグラが鎮座する。その美しさと言ったら! 見た目は食材のアンサンブルでも、味の決め手はやはり卵。こんな贅沢(ぜいたく)な卵料理がほかにあるだろうか。

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