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タイで証明された、「クチブトゾウムシの住処」の法則

2007年10月3日(水)

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 8月22日にヴィエンチャンからバンコクへ、さらにそのまま林さんのグループが待つチェンマイへ移動。途中バンコク空港で暇を潰す。

 17日にバンコク空港に到着したときは、すぐにタイ航空のカウンターに行き、ヴィエンチャン行きの切符の件で問い合わせをした。その間つい注意がそれて、アッというまに上着を盗まれた。幸い、貴重品もなにも入っていなかったので、クーラーが効きすぎて寒い以外には、問題はなかった。年寄りの一人旅は、泥棒さんのいいカモだから、気をつけないといけない。

 日経BPの柳瀬さんと、バンコク空港で待ち合わせ、一緒にチェンマイに行く。無事にチェンマイで林さんたちに合流できた。

 林さんは毎年、タイに来ている。タイでの案内役は、カササート大の昆虫学の大学院に在学中の、女子学生のチャマさんである。チャマさんはチェンマイの出身だという。昨年のコンケンでも一緒だったから、顔なじみである。ハチのような社会性昆虫を調べているという。

チェンマイ奥地の林道を歩く。・・・暑いです。

チェンマイ奥地の林道を歩く。・・・暑いです。

 翌23日はチェンマイ近郊の貯水池へ。周囲の林はチークの植林だが、一部に里山風の自然林が残っている。地面はありがたいことに砂地。タイでの採集は、珍しい虫を採ろうというのではないから、気楽なもの。人工の手が入ってしまった山に、どういう虫が生き残っているか、それを調べたい。

 ここには広義のクチブトの一種、Asticusが多い。さらにEpisomus(シロコブゾウムシ属)の一種、Blosyrus herthus (カククチゾウムシ属)、石垣島のヒラヤマメナガゾウムシに似て、もっと大きな種など、平地の普通種がいくつか採れた。ところが小さなクチブトゾウムシは、ほとんどまったく採れない。

 最大の問題は木の丈が高いことである。私の叩き網では、高いところの葉っぱにつく虫は採れない。ここの林の木はよく育ってしまっていて、下のほうには枝がない。若木もない。採れたゾウムシは、いずれも草本につくゾウムシなのであろう。

 林には若木の豊かな場所と、それがほとんどない場所がある。クチブトゾウを採ろうと思ったら、若木の多い場所がいい。

 極相に近い森には、むろん小さな若木なんかない。原生林が典型で、中に入ると真っ暗である。虫はほとんど採れない。そういうところで虫を採るなら、樹冠を狙うしかない。陽光が当たる樹木の天辺が地面に相当するので、人間が歩いている地面は、いわば地下なのである。熱帯雨林の木の高さは四十から六十メートル、その高さにいる虫を集めるには、それなりの工夫がいる。

 いまのところ、それをする気はない。面倒くさい。科学者のいい分ではないが、年寄りだから仕方がない。

 午後は貯水池の周りを回って、チークの人工林を歩く。虫はいない。日本の杉林だと思えばいい。明るいから杉林よりマシだが、虫が少ないことに変りはない。ダメな場所を確認するのも、虫採りのうちである。そう思って見れば、タイの平地にはチークの植林が多い。チーク林の中は明るく乾燥している。これもよくない。

 あまり虫がいないから、歩くのに熱心になって、どんどん先へ進んでしまう。悪い癖だが、仕方がない。道を歩くのが面倒だから、近道をしようと思って、貯水池の縁に出た。おかげで藪漕ぎみたいになって、かえって大変だった。

 山はどこでも同じ、うっかり道から外れてはいけない。

沼地にどんどん突っ込んでいく養老先生・・・先生、そっち、道ないですよっ!

沼地にどんどん突っ込んでいく養老先生・・・先生、そっち、道ないですよっ!

 翌日は峠を越えて、チェンライ方向へ行く。チャマさんの虫採りのフィールドである。タイは国立公園が多く、そこは採集禁止である。わざわざ許可をとって、そういう環境を調べるのは、もっとあとでいい。普通種がわかってからの話である。チャマさんが案内してくれるのは、国立公園でなくて、単に虫採りに向いた場所である。

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「タイで証明された、「クチブトゾウムシの住処」の法則」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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