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そろそろ死語でもまだ言うゾ!~『ユビキタスとは何か』
坂村健著(評:速水健朗)

岩波新書、700円(税別)

  • 速水 健朗

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2007年9月27日(木)

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評者の読了時間3時間15分

ユビキタスとは何か――情報・技術・人間

ユビキタスとは何か――情報・技術・人間』坂村健著、岩波新書、700円(税別)

 「ユビキタス」。Wikipediaによると「近年流行のバズワードのひとつ」なんだそうだが、そろそろ死語の領域に入り始めている気がする。そんな折に登場したのが本書。心配しつつもページをめくってみる。

 「ユビキタス」とは“どこにでもある”という意味で「ユビキタス・コンピューティング」とは、いつでもどこでも自由に情報通信ネットワークに接続可能という意味。「ユビキタス社会」が到来したあかつきには、ネットワークを通し、様々なサービスの恩恵が受けられるようになると言われている。

 まあ、そのようなことはネットの用語辞典でいくらでも解説があるので詳細は省略する。また本書も、タイトルが示す「ユビキタスとは何か」といったような入門書的な内容ではなく、技術を産むことと活かすことの違いについて考察するというものだ。

 著者は組み込み型OSの分野の第一人者で、1980年代から「ユビキタス・コンピューティング」の概念を(かつては「どこでもコンピュータ」の呼び名で)提唱し続けてきた東京大学大学院情報学環教授の坂村健。

技術革新だけでは「イノベーション」と言わない

 坂村は、「イノベーション」という言葉が日本語で「技術革新」と訳されることに疑問を投げかける。この概念を生み出した経済学者・シュンペーターは、「技術革新だけでなく、新商品の導入や市場の開拓、組織の再編なども含む概念」として定義していたのに、日本では「技術革新」と訳されたために、まったく違うものとして受け取られるようになってしまったという。

 「イノベーション=技術革新」が定着してしまったせいで、日本は技術偏重の傾向が強くなり、それが今後さらに発展していく「ICT(情報通信技術)の分野で大きなハンディ」となると著者は危惧している。坂村の主張は、技術の革新以上に制度や構造の革新=「ソーシャルイノベーション」が重要である、というものだ。

 ここで具体的に示されるのは、iPodがシェアを伸ばした理由について。iPodのヒットの要因は、HDDの容量やスピードといった技術の力ではなく、アップルが築いた「インターネット上での音楽配信構造全体」にあったという。

 アップルは1曲99セントでダウンロードできる環境を作り、著作権制度に挑戦を挑んでPCから何度でもiPodにコピーできる仕組みを作った。これがiPod成功の土壌となった「ソーシャルイノベーション」だ。しかし、iPodを追いかけた国産メーカー各社は、iPodの性能を凌駕するライバル機を作ることのみに固執したため、どれも惨敗した。「ソーシャルイノベーション」の重要性に気付かなかったのだ。これが著者の危惧する「技術偏重」の落とし穴だ。

 坂村が「ソーシャルイノベーション」を持ち出すのは、彼が推進する「ユビキタス・コンピューティング」が「技術革新」なのではなく、鉄道や電話網のような「インフラ」であるからだ。

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