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他人に評価される技術~『いつまでもデブと思うなよ』
岡田斗司夫著(評:栗原裕一郎)

新潮新書、700円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2007年9月28日(金)

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評者の読了時間1時間30分

いつまでもデブと思うなよ

いつまでもデブと思うなよ』岡田斗司夫著、新潮新書、700円(税別)

 さすがはオタキング、読ませ巧者だ。面白い。が、本当に面白くなるのは、読み終わってからである。コクが満点、というかありすぎ。

 著者のブログによると現時点で16万部出ているそうで、すでにベストセラー射程内、このタイミングで内容紹介なんかしても間抜けだから(みんなもう知ってるでしょ?)、少し踏み込んでみたい。

 さて、いきなり結論めくが、本書は二面性を備えた書物である。具体的にはこうなるかな。

  1. 1年間で50キロやせた「レコーディング・ダイエット」の手引きおよび体験録という実用書的側面
  2. 「見た目主義社会」に対する(身を挺しての)社会批評的側面

 断っておくと、私はBMIが19前後の標準体型でダイエットの必要はとくになく、したがって実用書としては読んでいない。

 初っ端、第1章で岡田は、日本社会はもはや「見た目主義社会」になっていると断言する。イケメンのほうが有利とかってレベルじゃなく、「見た目の印象」が「ファースト・ラベル(もっとも重要な情報)」として個人の社会的価値を決める時代になったというのだ。

 この社会では、外見によって人は「キャラ」設定をされる。太っている人はもちろん「デブ」だ。そして、このキャラは、学歴や家柄、仕事の評価や内面なんかではまず上書きされない。

 「見た目」によって貼られたラベル=キャラを変更することがかぎりなく困難である以上、「見た目」を良くする、つまり「デブ」であることから脱却するのが「もっとも経済効果のいい対応策」である、と結論される。

 ロジカルである。本人も言及しているけれど、ある意味では、出世作『ぼくたちの洗脳社会』(朝日新聞社)の変奏でもある。

 この論評が第1章に置かれたことで、オタキングのダイエットは、「見た目主義社会」に対する、身を挺しての批評的実践じみたニュアンスを帯びるだろう。

 ところで、いまではほとんど意識されないけれど、ダイエットというのは、ニューエイジ運動に付随して発展というか展開してきた歴史を持つ。詳しくは、海野弘『世紀末シンドローム』(新曜社)や阿部嘉昭『精解サブカルチャー講義』(河出書房新社)などを参照のこと。

見た目を良くして、よりよき「周囲からの評価」を

 ニューエイジのいちばんの特徴は、身体性と精神性に価値を置き、お手軽に自己変容(改革)を目指すところにあった。政治的に挫折したヒッピーたちは社会に潜り込み、資本主義とニューエイジを融合させ、自己啓発というかたちに昇華する。だから、ビジネスとニューエイジはいまでもきわめて相性がいい。

 さて、小飼弾氏がブログ「404 Blog Not Found」の書評でいち早く指摘していたが、「レコーディング・ダイエット」は、日本でもカルトになりつつある「ライフハック」系の仕事術「GTD(=Getting Things Done)」と、まったく同じ方法論でできている。

 GTDとは、タスクを書き出すことで、行動をシステム化し、高い生産性を獲得するメソッドであり、目指されているのは「よりよき人生の実現」である。

 小飼氏はこの一致を偶然と見たのか、「面白い」と軽くやりすごしているのだが、偶然で片づけるにはできすぎだろう。

 当コラムでも書評を担当している速水健朗氏は以前、「Life Hacksって早い話がギーク、もしくはエンジニアワナビー版の自己啓発でしょ?」と身も蓋もなく斬っていた。ニューエイジ的自己変容願望は、自己啓発に姿を変え現代社会に深く根を張りつづけ、GTDへと結実(?)したわけだ。その随伴物であるダイエットがGTDと同じかたちに行き着いた――偶然であろうはずがない。

コメント4件コメント/レビュー

確かに鋭い指摘だ。ただ、この本、面白いのは途中までで、最後のほうは結局「カロリーをきっちりコントロールする」という伝統的にして科学的で正統派な方法に落とし込まれていくので、既に知っている内容だということで、真剣に読んでいなかった。個人的な感想としてはこの本は、出だしの見た目主義に関する論説と「助走」としてのレコーディングダイエットについて書かれた部分が肝なのだと思う。後半の部分は、そういう準備運動をやった結果として「カロリーコントロールが楽にできる」ようになるという結果の紹介に過ぎないので、真剣に読むほどのことはない。巻末で「人生」の「奇跡」について人を「そそのかしている」のはひょっとしたらオタキングの策略なのかもしれないが、殆ど印象に残ってないので失敗なのではなかろうか。(2007/10/02)

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いただいたコメント

確かに鋭い指摘だ。ただ、この本、面白いのは途中までで、最後のほうは結局「カロリーをきっちりコントロールする」という伝統的にして科学的で正統派な方法に落とし込まれていくので、既に知っている内容だということで、真剣に読んでいなかった。個人的な感想としてはこの本は、出だしの見た目主義に関する論説と「助走」としてのレコーディングダイエットについて書かれた部分が肝なのだと思う。後半の部分は、そういう準備運動をやった結果として「カロリーコントロールが楽にできる」ようになるという結果の紹介に過ぎないので、真剣に読むほどのことはない。巻末で「人生」の「奇跡」について人を「そそのかしている」のはひょっとしたらオタキングの策略なのかもしれないが、殆ど印象に残ってないので失敗なのではなかろうか。(2007/10/02)

これまで読んだ同書の数多の書評の中で、最も鋭く、示唆に富み、かつ面白かった。ここまで踏み込んでこそ、真にプロフェッショナルな書評の名にふさわしい。素晴らしい。ダイエットとニューエイジの関係というのも、不勉強にしてあまり知らなかったが、海野氏と阿部氏の本にも興味を持った。(2007/10/01)

食べたものを書き出す、そのときの時間、心理や一緒にいた人もふくめて、というのはかなり昔からいわれてきたダイエットの基本。肥満指導の際に必ず用いられてきた手法だ。しかし、実際にそれを実行できる人はごく稀。日記さえ三日坊主になる人間が大半なのに、そんな辛気臭い作業を継続できるとしたら、それだけでひとつの技芸、才能といっていい。GTDも同様だ。それに、ああいう仕事手法の技術書というのは、ある一定の職種にしか使えない。あの種の本を何冊か読んだが、打ち合わせがしょっちゅうある、とか、締め切りをいくつもかかえている、とか「タスク」という名前であらわされるようなお仕事以外では、ハズレ。手帳術も流行ったが同じようなもの。しょせん、自分の手法は自分で築くしかない。(2007/09/28)

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