日本一の画廊街と言えば銀座だが、お隣の京橋から日本橋にかけての一帯にも多くの画廊が軒を連ねる。特に京橋は銀座に隣接しながら若干、地価が安いせいか、近年は銀座から移転してくる画廊も少なくない。そんな京橋の地に店を構えて半世紀近くになるのが南天子画廊だ。
設立は1960年というから、前回紹介した東京画廊とともに戦後の現代美術を支えてきた老舗画廊の1つと言っていいだろう。ちなみに南天子(なんてんし)という画廊名は、創業者・青木一夫の岳父・西山保の俳号からとったという。
オープニングを飾ったのは、美術評論家として日本の現代美術をリードし、自ら作品も制作した詩人の瀧口修造展。以後、靉光(あいみつ)、池田満寿夫、横尾忠則、ミロ、ジャコメッティら内外のアーティストの作品を紹介してきた。また、74年には日本の画廊として初めてバーゼルのアートフェアに出展したのをはじめ、パリやシカゴのアートフェアにも参加している。
その南天子画廊で10月6日まで個展を開いているのが横尾美美(みみ)だ。同画廊では初の個展となるが、アーティストとしてはすでに10年以上のキャリアがある。
見る者に多様な見方を許す懐の深さ

南天子画廊(東京・京橋)で開かれている横尾美美展の会場風景 (撮影:小川玲子、以下同)
会場には20点を超す絵画が並ぶ。一見して分かるのは、正方形か極端に縦長(縦横の比率は7:3)の画面が多いことと、純白のシンプルな額縁に入っていること。この辺に作者の形式に対するこだわりがうかがえる。
近寄ってよくよく眺めてみると、さらにいくつかの特徴が浮かび上がってくる。まず、描かれているのがほとんど野菜や果物、お菓子などの食べ物であること。あえてジャンル分けすれば静物画ということになるのだが、図版か写真を見て描いたのだろう、どれもかなりクローズアップされているうえ、縦長の作品ではイメージが上下で回転対称に配されているため、静物画というより一見何か装飾的なパターンのように見えてしまうのだ。

横尾の描く作品は食べ物を点描風に描いたものが多い
また、作品によっては、ビーズや野菜の模型や小さなフィギュアなどが取り付けられたものもあり、遊び心が発揮されている。こういう点が、これまでイラスト系の画廊を発表の場にしてきた理由かもしれない。
しかし、彼女の一番の特徴は、なにより内側から輝くような鮮やかな色彩と、点描のように細かいタッチの細密描写にあるだろう。そしてこの2つの要素は、彼女の作品において密接に重なり合っているように思えるのだ。
ここで点描画法の創始者ジョルジュ・スーラを思い出しておくのも無駄なことではないだろう。スーラは印象派の光学理論を推し進め、光を色彩の粒子として表わすために原色の絵具を点々にして画面を埋め尽くした。そのため新印象派とか点描主義とも呼ばれている。
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