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老舗が出版する陰謀論~『秘密結社』
桐生操著(評:小田嶋隆)

中公新書ラクレ、860円(税別)

2007年10月12日(金)

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評者の読了時間1時間30分

「秘密結社 世界を動かす「闇の権力」

秘密結社 世界を動かす「闇の権力」』桐生操著、中公新書ラクレ、860円(税別)

 フリーメーソン、イルミナティ、テンプル騎士団、シオン修道会……と、こういう名前がしきりに連呼されていた時代がある。

 というよりも、1980年代ぐらいの段階では、この種の秘密結社の名前を知っているのは、むしろ知的エリート層だった、と言えば言える。デマはデマであるにしても、だ。

 まあ、霊界の実在を信じている組の人々も決して少なくないことだし、オーラの色について語り合うことで午後の数時間をつぶすことのできるカップルが数多く実在していることも事実なわけで、とすれば、こういう場で、イルミナティをネタと決めつけるのは野暮なのかもしれない。

 現在でも、インターネットのその方面のサイトでは、相変わらず、三百人委員会だの薔薇十字軍だのの名前が延々とコピー&ペーストされている。書店に行けば陰謀論専門の雑誌が並んでいるコーナーもある。

 それだけではない。たとえば、9.11をブッシュ政権による自作自演だと主張する人々は、非常に広範な層に及んでいる。事実、現役の新聞記者のブログで、この話が大真面目に論じられているのを私はこの目で見た。

 すごい。

 とはいうものの、この種のトンデモな陰謀論ネタは、オウム騒動とマルコポーロ事件(文藝春秋社が発行していた雑誌『マルコポーロ』が、ナチスドイツによるホロコーストを否定する記事を掲載したことを理由に廃刊に追い込まれた事件)を機に、表舞台から消え去った……というふうに私は思っていた。

 が、どうやらそんなこともなかった。

先輩の「陰謀論」に目を輝かせたあの日

 歴史は繰り返す。

 そして、陰謀論もまた、この数年、明らかに復活してきている。

 テレビを見ていても、最近は、占いや霊界がらみのオカルト番組や、UFO、古代迷宮、都市伝説関係の主題を扱った企画が続々と復活している。きっと、この種のネタ話には、永遠の需要があるということなのだろう。

 だからこそ、ちょっと前だったら○○ブックスあたりしか相手にしなかったはずの出版企画が、中央公論新社(新社というのは、こういうことだったのだろうか?)みたいな老舗から堂々と出てきてしまったのだと思う。

 ソ連崩壊のシナリオを書いたのはフリーメーソンであって、ゴルバチョフを裏から操っていたのは……みたいな話は、話のタネとしては面白い。

 はじめて聞く人の耳には、新鮮に聞こえるかもしれない。

 でなくても、これらの陰謀論の真偽について、あれこれ語り合うことは、一定の知識と教養を持った者同士の間でなら、一種の知的なゲームとして成立する可能性はある。

 告白すれば、私自身、ずっと若かった頃は、「オイルショックを演出したのは実はユダヤ人の秘密組織で……」みたいな情報を持ち出してくる先輩に、畏敬の念を抱いていたりした。うん。若かった。殴りに行けるものならぜひそうしたい。オレもあいつも。

 問題は、この種の話が、いつしかユダヤ陰謀論に結実していくところだ。

 やれ現代の世界は、たった13の血族が支配しているだとか、オイルメジャーと穀物メジャーを裏から支配している闇のユダヤ人秘密組織がどうしたこうしたとか。

 罪な話だと思う。そんなこんなで、マルコポーロはガスパッチョの解説屋になりさがったわけだし。

 陰謀論にそれなりの説得力をもたせるのは、そんなに難しい作業ではない。

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「老舗が出版する陰謀論~『秘密結社』
桐生操著(評:小田嶋隆)」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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