「「ナショナル ジオグラフィック日本版」編集長の「地球からの報告」」

世界の船乗りが恐れるマラッカ海峡の海賊

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2007年10月12日(金)

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 マレー半島とスマトラ島を隔てるマラッカ海峡は、海運の要衝であると同時に、海賊の巣窟でもある。

 マレーシア北部にある刑務所に収監されているその海賊の話はどこまでが本当で、どこからが嘘なのか、さっぱり分からない。無実を訴えたかと思うと、そのすぐ後に罪を認めたりする。パスポートの名前は「ヨハン・アリフィン」だが、マレーシア当局は偽名だと考えている。

 黒髪に白髪が混じっているのを見ると、44歳という年齢は嘘ではないのかもしれない。住所はバタム島とある。バタム島はシンガポールのすぐ南のインドネシア・リアウ諸島にあり、看守の話では、同じような罪状でつかまる連中には、この島の出身者が多い。



スマトラ島の西に浮かぶバビ島は、かつて海賊たちでにぎわった。人目につかないこの建物では冷えたビールとカラオケを楽しめるが、奥には個室も用意されている。こうした建物はリアウ諸島のあちこちにあり、インドネシア全土の貧しい女性の働き口となっている。
スマトラ島の西に浮かぶバビ島は、かつて海賊たちでにぎわった。人目につかないこの建物では冷えたビールとカラオケを楽しめるが、奥には個室も用意されている。こうした建物はリアウ諸島のあちこちにあり、インドネシア全土の貧しい女性の働き口となっている。

 本名は不確かでも、この囚人が「ラヌーン」であることは間違いない。通訳によれば、ラヌーンという言葉には幾重もの文化や歴史的な背景があり、一言では訳せないという。だが、ここではあえて「海賊」と訳すことにする。

 彼が「海賊」と呼ばれるようになったのは2005年のことだ。マラッカ海峡を航行していたマレーシア船籍のタンカー「ネプリン・デリマ号」を9人の仲間とともに襲撃し、マレーシアの海上警察に逮捕されたのだ。このタンカーは、300万ドル(約3億6000万円)相当のディーゼル燃料7000トンを積んでいた。マラッカ海峡ではこのような襲撃事件は決して珍しくなく、2005年だけでも何度も起きている。

 マラッカ海峡は、インドネシアのスマトラ島とマレー半島を隔てる全長804キロメートルの海峡で、ここを通るルートはインドと中国を結ぶ最短航路になる。ここは昔から海の男たちが集まってきた海峡であると同時に、長い歴史と豊かな文化をもつ独特の“海の王国”でもある。

 海峡には何百もの河川が注ぎこみ、沿岸には湿地が延々と続き、数えきれないほどの小さな島々や岩礁、浅瀬が点在する。最初に住みついた人たちは水上に集落を形成し、漁や交易、戦いなど、目的に応じた船を考案して、水陸両方での暮らしに順応していった。

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藤田 宏之(ふじた・ひろゆき)

『ナショナル ジオグラフィック日本版』編集長。1987年に日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社。『日経ベンチャー』『日経ビジネス』の編集などを経て、2007年4月から現職。『ナショナル ジオグラフィック』は米国ワシントンD.C.に本部を置く1888年設立のナショナル ジオグラフィック協会が発行し、世界約180カ国で850万人が購読する月刊誌。自然・野生動物・社会・文化・探検・科学など、地球とそこに生きるすべての生き物の営みを、世界の一流写真家が撮りおろす美しく迫力に富んだオリジナル写真と、正確で臨場感あふれる記事で紹介している。このコラムは『ナショナル ジオグラフィック日本版』の最新号の特集から、その内容を要約して紹介する。

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