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「ええお世話をされましたね」

  • 小橋 昭彦

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2007年10月16日(火)

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 近所のおばあさんが亡くなって、組長をしているぼくが葬儀委員長を務めることになりました。

 組長というのは2年任期で、隣保内の世帯による持ち回りですから、任期中に組内で葬式を出すことはそうなく、引継ぎも受けていません。なにからどう手をつけていいものか皆目見当がつきません。とりあえずインターネットで検索しましたが、出てきたのは、社葬、つまり会社としての葬儀における委員長向けのマニュアルばかり。ぼくの場合のように、通常の葬儀における委員長向けの文書は見つかりません。

 亡くなられた日の朝、当家のご主人がわが家に来られ、ご母堂の死去と、自宅で葬儀をする旨、ご挨拶されました。こういうとき、どういう言葉をかければいいのでしょう。

 「ご愁傷様です」はなんとも形式的でかえって口にしづらく、といって、直接ご主人のお母さん(亡くなられたおばあさん)を知らず、思い出を語ることも出来ない。それは残念なことで、くらいの言葉をもごもごするばかりの自分を情けなく思いつつ、ご主人の背を見送ったことでした。その朝、ぼくはそれほど慣れない場面に(そんな場に慣れるというのも困るわけですが)突然ほうりこまれたのでした。

葬儀委員長がすべてを仕切る

 やがて畑から母親が戻ってきたので、朝の出来事を伝えました。

「それはたいへんや、葬儀委員長をせなならんで」

 全体のシナリオはおおむねあるのかと思っていたら、

「そんなんあらへん、全部を仕切るんが葬儀委員長や」

 それを聞いて、これはたいへんなことになったと、ようやく実感が芽生えてきたのでした。何がたいへんって、そもそも何がたいへんなのかを把握することさえできないのです。葬儀というのは誰が何をして、どのように進んでいくものなのか。会場準備やお坊さんへの手配は誰がするのか。どこから手をつけ、何を尋ねればいいかさえわからない。わからないのが何かが、わからない。

 そのとき隣保内でいちばん頼りになる人といえば、今回亡くなられた家の当主でした。しかしまさかご当家に尋ねることもできません。とりあえず当主が、葬儀会社には連絡を済ませ、翌日の午後から打ち合わせをすると言われていたので、その場に同席することにしました。そうした場に地域の者が同席すべきなのかどうかも判断つかなかったのですが、ほかにしようがありません。一緒に行くという母とともに出かけたのでした。

 次の日、当家の玄関には奥様が出迎えられました。

「ええお世話をされましたねぇ」

 しみじみと、母が言いました。

 ああ、そうか、こんなすてきな言い方があるのだ。あわせて頭を下げつつ、ぼくは思いました。前日からの迷いが晴れていくようでした。

 亡くなった人を惜しむ言葉では、遺族の悲しみにかないません。でも、この言葉なら、遺族の立場になれないことを前提としつつ、故人の最後を看取った遺族の心に寄り添って、その日々を認め、やさしく包んでいる。心に刻んでおこうと思いました。こういう言葉の引き出しを増やしていくことが、地域の縁に生きるということかもしれません。

 結果的に、遺族と葬儀会社との打ち合わせに出席したことが、葬儀委員長を務めるにあたっておおいに役立ちました。僧侶の手配などは当家で済まされており、葬儀全体の流れや、自宅(会場)の飾りつけなどについて、葬儀会社主導で決まっていきました。こちらとしては、その中でどの部分を、裏方である、隣保の住民からなる葬儀委員で分担するのかを切り出していけばいい。

 たとえばご供養のだんご作りとか、受付対応、近隣の交通整理などは地域の担当。お弁当の準備や僧侶へのお布施も葬儀委員の仕事。会葬者のためのテント張りや椅子の準備、式場(自宅)外のお飾りもそうです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官