2時間10分

『自治体倒産時代』樺島秀吉著、講談社+α新書、800円(税別)
「借金も収入だ」などと個人が言ったら、サラ金でカネを借りまくっている多重債務者と思われるにちがいない。が、それが長い間まかり通ってきた世界がある。市町村など地方自治体だ。
本書では、借金である「地方債」をバンバン発行し、ホールなどの「ハコモノ」をせっせと作った市町村が、返せる見込みの立たない膨大な借金を抱えて首が回らなくなってしまった信じられないような実態が、豊富な実例とともに紹介されている。
冒頭は「倒産」した夕張市のルポだが、これがなかなか読ませる。過疎化が進み、医療や福祉など最低限の住民サービスすらままならない現状に、やるせなさすら感じさせられるが、それが借金で放蕩生活を送った結果ということが分かると「自業自得だな」と思い始める。
夕張市は、炭鉱の閉鎖で人口が急減し、税収と地方交付税交付金が減少したにもかかわらず、身の丈を越えた財政支出を続けてきた。撤退するリゾート会社から「ホテルシューロパ」を取得するのに20億円、スキー場の「マウントレースイ」の取得に26億円、平和運動公園の整備に12億円、郷愁の丘ミュージアム整備に11億円といった具合だ。こうした“村営”事業が市の職員を大量に抱え続ける受け皿になってきたのだ。
夕張市の過激なリストラと、すごい退職金
269人いた市の職員のうち、2007年3月30日付けで、部長全員、課長55人中52人を含む142人が退職したとあり、リストラの激しさを想像するが、実は退職金の総額が27億7000万円で、ひとり平均1950万円が支給されたと分かると、怒りがこみ上げて来る。
自治体を借金漬けへと走らせたきっかけとして著者が注目するのが、「地域総合整備事業債」という債券だ。ハコモノを建設する費用の75%をこの債券で賄うことができるうえ、残り25%のうち15%は国から地方に配分される資金(地方交付税交付金)で補てんされる仕組み。つまり事業費の10%しか資金負担が生じないのだ。
もちろん債券は借金だから、後々返さなければいけないが、その返済額の35〜55%も地方交付税交付金で賄われるというのだから、地方にとってはたまらない。何でもいいから「建てなければ損」というムードになったのだろう。田舎の田んぼのどまん中に不釣り合いな豪勢な市立美術館が建っている光景はもはや「日本の風景」といっていいが、そんな風景の背後にはこんなカラクリがあったわけだ。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




