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「私の履歴書」読んでます?~『熱湯経営』
樋口武男著(評:柴田雄大)

文春新書、700円(税別)

  • 柴田 雄大

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2007年10月17日(水)

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熱湯経営 「大組織病」に勝つ

熱湯経営 「大組織病」に勝つ』樋口武男著、文春新書、700円(税別)

 日本経済新聞の最終面に掲載されている「私の履歴書」について、「経済人はおもしろくない」という声をよく聞く。半面、文化人やスポーツ選手はおもしろい。その差は何かと言えば、「恥」を書いているかどうかだ。

 文化人などは自分の失敗談を笑い飛ばしてしまうが、大企業の経営者は社員や株主などの手前、自分の過去の失敗や後悔、恥をかいた場面をなかなか書き込まない。結果として経済人の原稿は全編これ自慢話になりかねず、読者は鼻をつまみたくなる。

 本書『熱湯経営』は大和ハウス工業という日本を代表する住宅メーカーの経営トップによる著作だ。タイトルだけみると経営論かと思ったが、内容はちょっとした「私の履歴書」だ。

 ただし、「経済人」の履歴書ではない。それは、冒頭から左遷された場面が展開されることでも明らかだ。

 1993年4月、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世街道をばく進、専務取締役として絶頂にあった著者が、ある日突然、オーナー経営者に呼ばれ、大幅赤字で倒れる寸前の関連会社の社長を命じられる。「なぜ俺が」という思いを飲み込み、気を取り直して赴いた大和団地は、有利子負債が売り上げの2倍、不動産評価損500億円、累損赤字86億円の、まさに泥舟だった。

 樋口氏は経営立て直しに奔走する。まず「絶対に人は切らない」と社内で宣言し、人事に「毎年100人採用しろ」と発破をかける。そんな無茶なとあきれ果てる人事部に「まあみていろ」と胸を張る。

 本書のタイトル『熱湯経営』は、ぬるま湯経営の反対だ。大きな組織ゆえに挑戦する姿勢に欠け、仕事もマンネリになっている企業を樋口氏は「大組織病」と呼ぶ。

「これで、戦闘態勢が整った」

 当時、危機的な状況にあるにもかかわらず、大和団地は大組織病に冒された、ぬるま湯経営の会社だった。樋口氏は赤字続きの支店の常務支店長を、オーナーの縁故者だったにもかかわらず更迭、その一方で30代のやる気のある若手を支店長に抜てきするなど、経営に熱湯を注いでいく。2週間かけてハンコを14個も捺して稟議していた土地の仕入れも、「自ら現地に足を運び、すべてその場で決める」方式に改めた。

 熱湯経営導入から1年後、人事課長がすっとんでくる。「えらいことです。退職者が120人になりました」。樋口氏は「さわぐな。退職者の入社年次を調べろ。平成元年から3年あたりだろう」。人事課長が調べると、はたして退職者の85%がこの3年間(1989~91年)の入社だった。その翌年、また110人のバブル入社組が退職、以後、退職者はピタリと止まる。100人の中途採用を命じた樋口氏は、これを見越していたのだった。

 「採用が冷えている今こそ優秀な人材を採れるチャンスだ」と中途採用の手を緩めず、辞めたバブル組と同じ数の社員を迎え、樋口氏はこうつぶやく。「これで戦闘態勢が整った」。

 私は関西を拠点に仕事をしていた時、何度か樋口氏にお会いしたことがあるが、なかなか魅力的な経営者だ。本書の中でも、最初の就職先は無名の中小企業で、大和ハウスには新聞広告をみての中途採用(1963年入社)だったことや、福岡支店長時代に張り切りすぎて体をこわし、2度にわたって長期入院をした苦労話などが、木訥な筆致で描かれる。こうした飾り気の無さが、ともすれば臭くなりがちな経営トップの回顧談を抵抗なく読ませる。

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