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缶ビール以外は見ないふり?~『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』
魚柄仁之助著(評:栗原裕一郎)

朝日新書、740円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2007年10月19日(金)

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評者の読了時間3時間00分

冷蔵庫で食品を腐らす日本人 日本の食文化激変の50年史

冷蔵庫で食品を腐らす日本人 日本の食文化激変の50年史』魚柄仁之助著、朝日新書、740円(税別)

 『日経ビジネスオンライン』の読者諸兄は料理などするだろーか?

 と著者の口調をまねて書いてみましたが、そんなの、人それぞれに決まってますわな。

 メシなんぞつくってる時間もないし食えれば何でもいい、という向きのために解説すると、本書の著者・魚柄仁之助は、「食」に関心を持つ、主に自炊派の人々の一部からカリスマのごとく崇められる食文化研究家である。

 ようするにすごい人物であるわけだが、何がすごいって、まずルックスがすごい。

 隻眼の痩身に、伸びるにまかせたロン毛の、仙人というか落ち武者というか難民というかルンペ……、あ、いやいや、ともかく、現代ニッポンにおいては規格外れのたたずまいであり、容赦のない異彩を放っている。

 風体に劣らず(というかこちらが本筋なんですが)、食にかんする“思想”もユニークである。

 代表作のひとつに『ひと月9000円の快適食生活』(飛鳥新社、97年)という本がある。そこいらにある食材を使い、できるかぎりの手抜きをして、安くてうまくて見栄えもよくて、かつ健康的である料理をつくるノウハウがこれでもかと詰まった本だ。

 このタイトルがよく表わしているとおり、「いかに余計なカネや手間をかけずムダを出さずに、充実した食生活を実現するか」が、うおつか流のキモであり、あえて言葉にするなら「合理性」の一言に集約される。ただ、その追究が極度に過激なせいで、ヘンな人に見えてしまうわけですね。

巨大化する冷蔵庫に消えていく「食文化」

 人間っつーのはずぼらで怠惰な生物ですから、合理性を追究するには、ときに発想の転換が必要とされる。その転換のダイナミックさこそが、うおつか氏の真骨頂だ。

 本書は、うおつか氏の思想面を集大成した一冊である。これまでの氏の著作はレシピや技の紹介に徹したものが多く、合間合間に小出しに挟まってはいたとはいえ、“思想”の全体はなかなか見えにくかった。

 タイトルは主題を的確に象徴している。副題に「日本の食文化激変の50年史」とあるとおり、戦後、生活が豊かになるとともに大型化の一途をたどった冷蔵庫という家電に、われわれニッポン人の食文化の問題は集約されているだろう。

 高度成長期が終わって久しい現在も、冷蔵庫の巨大化は進行しつづけている。だが、その中身はというと、腐りかけの肉や魚や牛乳、しなびた野菜、いつ(何年前に)冷凍したかはおろか、いったい何が冷凍されているのかも判然としないナゾの物体、籠城でもしようかというほどの量の冷凍食品群……などで埋め尽くされているだけではないか? それが豊かな食生活だって? と著者は挑発的に問いかける(お宅の冷蔵庫はいかがでしょーか?)。

〈本来、衛生的かつ安全に食べられるように保存するための道具である冷凍冷蔵庫のはずなのだが、まさにブラックボックス化し、買いこんで傷みかかった食材をひっぱり出して、「早く食べちゃわなきゃ」と追われるようにして食べておりゃせんだろうか? これは本末転倒食生活。(中略)食糧難の時代でもあるまいし、まさにあさましいとしか言いようのない姿が、今日の日本にはあるのです。〉

 その「あさましさ」の要因して、まず指摘されるのは、当然「合理性」の欠如である。

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