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「体育祭」と「自己破産」と「男の子」と

~第2走者の憂鬱

  • 岡 康道,小田嶋 隆,清野 由美

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2007年10月19日(金)

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小田嶋 今日は、とっておきの話があるからね。

 何?

(とはいえ、前回から読んでみる)

小田嶋 うちの高校は3年間同じクラスで、体育祭というのは激しく盛り上がることになっていたでしょ。その中でも、最後のクラス対抗リレーというやつは、3年I組、2年I組、1年I組という縦のクラスで組んで、持ち点も高いから、みんな命を懸けてたんだよね。上下で結束して、絶対勝とうぜ、みたいな嫌な盛り上がり。で、うちのクラスで岡はリレーの選手に選ばれていたの。選ばれていたというか、タイムのいいやつを4人リストアップして、そいつらが自動的に出ることになっていたんだけど。

 小田嶋も僕も陸上部だったんだよね。

小田嶋 その時、岡に「じゃあ、タイム順でお前がアンカーだから」という話を持ちかけたら、「いや、俺、アンカーなら出ないよ」と答えたんだよ。こんなことを言うやつはいるのかと、びっくりしたよ、僕は。「何、それ??」と言ったら、岡は「アンカーはタイミングによって抜かれたりするじゃない? 俺、そういうのイヤだから」という言い分なわけ。つまり、各クラス全部一番速いやつがアンカーじゃない? そうすると、バスケット部のエースだとか、サッカー部の何とかだとか、バカみたいに速いやつがI組まで8人で、だーっと来るわけで。

―― A組からI組があるのでしたら、9人ですね。

小田嶋 そ、9人ね。で、そこの中にいると、タイミングによって抜かれたりする、と。だったら嫌だ、と岡は言う。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、撮影協力「杏奴」)

 それは微妙に違う。正確に言うと、アンカーで渡されても決着は付いていると、俺は言っていたわけ。つまり抜き返せるほどの実力差なんかないわけですよ。5位でもらったら5位だし、6位でもらったら6位。2位でもらったら2位だよ、と。それじゃ勝てないだろう、と僕は言ったつもりなの。

小田嶋 そうそう、それで3走(第3走者)ならやるよと、言ったな。

 2走だよ、2走。

小田嶋 2走か。で、実際、岡は2走をやったんだよね。うちのクラスは何位だったか、かなり後ろの方で来たんだけど、2走でごぼう抜きしてね。本来アンカーをやるやつなんだから速いんですよ。たぶんトップか2位ぐらいで入ってきて、いい感じでアンカーまでバトンが渡されて、で、アンカーはタカハシ君という、あまり速くないやつだった。

 何しろ将棋部だったからな。

リレーに見えた「美学」の違い

小田嶋 それで、2位か1位かでバトンをもらった将棋部のタカハシ君が、ぼこぼこに抜かれまくっちゃって、8位か何かで終わった。その時に岡は悪評さくさくだったね。

 割といろいろ責められたな、ということは覚えているよ。

小田嶋 だから俺はずいぶんフォローした。当時の高校生の美学というのはさ、ほら、みんな『あしたのジョー』とか『巨人の星』を読んでいたりしたわけでしょ。そんな精神性の人間からすると、負けてもいいからアンカーで走るのが男ってものだろう、みたいなことが暗黙の了解なわけ。でも、岡の美学では違った。それには結構、唖然としたね。

 いや、それはさ、ストーリーもあるんだよ。僕は中学の時も野球と陸上をやっていたの。野球部は弱かったんだけど、陸上部は強かったんだよね。東京代表になって、NHK放送陸上にも出てるわけ。そのときに俺は2走だったんだよ。それは単に俺が一番遅いということもあったんだけど。それで、2走というのは短いんですよ、走る距離が。

―― コーナーのところですか。

 いや、コーナーじゃない。直線。結局、走りながらバトンをもらって、そのまま次の選手に渡しちゃうようなパートなわけだよね。それで、2走をやる精神状態というか、リレーが始まってスターターがスタートして、次が自分で、というのに慣れていたわけ。慣れていたというか、それしか考えられなかった。

小田嶋 カーブが嫌いだったもんな。

 カーブがまず嫌いで(笑)。そういうこともあって、ぜひ2番目をやらせてほしいと。

コラムニスト 小田嶋隆氏

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋 でもそこで、俺は2走ならやるよ、という条件を出してくるのが、そういうストラテジーで来るというのが、俺は不思議だと思った。例えば俺とこいつの関係だと、大抵こいつが何か言って、俺が乗っかるかということで、俺が企画みたいなことを出したことって、めったにないんだけど。それで、たまに出すとこいつの返事がまたしゃれていたわけだ。「で、それは俺にとってどういうメリットがあるんだ」と。たぶん冗談なんだろうけど、そういう言い方をするのね。お前、それを言っちゃ話にならないだろうよ、とこっちは思うんだけど。

 いや、だから、もう、持ちかけられた時点で、それはそもそも論外な企画なわけ。だって、僕が提案する企画は、お前でも、ちょっと乗り出すような面白いものだろう?

小田嶋 だけど、俺の側にどういうメリットがあるんだ、という言い方をされると、お前、俺の側とか言うなよ、と。

 当時、物事を自分の欲望のままに言うことっていけない、それを我慢したり隠したりすることの方がいいと言われていたんだけど、俺は、そんなことはないだろうと思っていた。

小田嶋 それは、おそらく確かにあったよ。俺はエゴイスティックに欲しいものを欲しいと言うよ、という方がかっこいいんだ、みたいな感覚は。

 それはすごくあったね。だから偽悪的と言われようとも、なんかこう、いいやつぶったりするよりはよっぽどいいみたいな。

小田嶋 俺だってそうだったよ。クラスがみんなで勝とうぜ、みたいなことでまとまっていくことの、空気の気持ち悪さというのはあったわけだからね。それを知りながら、あえてアンカーを頼んだんだけど、こっちは。

 まあ、今にして思えば、偽悪的がよっぽどいいわけはない。だって社会生活ができないじゃないですか、それで通したら、現実に。おかげで友達だって少なかったね、僕の場合は。

小田嶋 友達は俺も少なかった。というか、高校を辞めちゃおうかというぐらい、ちょっと気持ち的に荒れていたこともあったしな。そうそう、俺が期末試験をサボったことがあって、その時に岡が左手で書いた答案を、俺の名前で出したこともあったね。

 漢文の試験かな。あり得ないような答案でしたね。

それは友情ではなかった

小田嶋 試験を受けないとボイコットだから、10点でも15点でも答案が出た方がいいだろう、という気持ちで出してくれたのではあると思うんだけど。それがバレて、岡が停学になったこともあったね。

 それでさ、僕が停学になった時に、小田嶋は教師に「俺は頼んでない」と言ったよね。まあ、確かに頼まれてないんだけどね。だけど……。

―― それはそれで。

 それはそれさ。何だかこう、ねえ。

小田嶋 お前は停学中でいなかったけど、あの時ホームルームが開かれて、また勘違いした女子が「岡君が友情でやったことなのに」とか何とか言ってたんだよ。それで俺が、いや、そんなんじゃないんだ、僕としては非常に迷惑なんだ、という話をしてさ。俺はそれで一時、すごーく嫌われたんだよ。

 確かに、別にそういうストーリーでやったわけじゃない。

小田嶋 だろう? お前は面白がってやったんだと思うよ。

 まず、左手で書いても、教師は分からないんじゃないかと思ったね。

―― 分かるんじゃないですかね、普通は。

 いや、実は最初は英語の時間にやったんですよ。そして、すぐにばれちゃったわけ。「こんなこと二度としちゃだめよ」と先生に言われて、「はい」なんて言った次が漢文だった。教師もまさか二度やるとは思ってないだろう。つまり今が一番チャンスなんじゃないか、と考えたんだ。

―― そんなばかな。

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