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【第14回】 PCM録音機を現地に運ぶが…

スタッフ、機材調達、音楽家の確保と難問が山積み

  • 諸石 幸生

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2007年10月19日(金)

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 前回インタビューしたのはデノン・レーベル(日本コロムビア=現・コロムビアミュージックエンタテインメントのレーベル)がヨーロッパで展開し始めた録音活動の舞台裏の話。1970年代初めにスタートした現地録音は、本場のヨーロッパでクラシック音楽を収録していく先駆的事業であり、他社に先んじたことはもちろん、日本のレコード会社の事業展開としても新たな第1楽章を告げるものであった。だが、人、機材、演奏家……など難問は山積みだったし、残響の豊かなヨーロッパの教会でどう録音すればよいのか、苦労と試練の連続でもあった。今回も引き続きヨーロッパ録音初期のエピソードをうかがう。


―― 1974年12月、パリで収録されたアルバムにバッハの『音楽の捧げもの』があります。これはパイヤールの演奏ですが、プロデューサーとしてガルサンの名前がありますね。

ヨーロッパ録音の難しさについて回想する川口義晴さん

ヨーロッパ録音の難しさについて回想する川口義晴さん (撮影:清水健)

川口:ええ、エラートのミシェル・ガルサンですね。これは共同制作なので彼が主体となって録音したということです。ガルサンは大プロデューサーで、エラートをあそこまで大きくした大功労者でした。しかも、かつてはパリ音楽院でパイヤールを教えたことがあるというぐらいの人物でした。ソルフェージュの先生だったようです。

―― どんな人物像でしょう。

 とても気難しい感じの良くない男でしたよ。

―― でもそういう人の力を借りながらヨーロッパ録音がようやく始まったということですね。振り返ると、その1カ月前の1974年11月にはパリのノートルダム・デュ・リバン教会でモーツァルトの協奏交響曲、コンチェルトーネ、それからヴァイオリン協奏曲第1、2番が収録されており、翌12月に『音楽の捧げもの』が録音されています。川口さんのほかに、結城亨、穴沢健明、それからピーター・ヴィルモースといったスタッフの名前があります。でもさらにさかのぼると、74年5月にはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の第3、5番というのもありますが……。

 でも、3番、5番には僕は関係してません。これら一連の制作は確かにエラートとコロムビアの共同制作なんですが、ガルサンとヴィルモースがやったアナログ録音ですね。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3と5番は。

―― ところが同じ1974年の12月には、今度はシュツットガルトでヘルムート・リリングのオルガンでのバッハ作品の収録をしてますね。これはパリが終わってから飛んで行ったんですね。

 そうです。その前後の事情を説明しますと、パリまで行って3枚の録音だけじゃコストばっかりかかってしょうがない。だから、何かほかにも録ってこいっていうんで持ち上がった話なんです。そもそもはプロデューサーの結城さんがオルガンを録りたいって言い出したんですよ。僕はオルガンなんかに興味はなかったけれど、でもやるんなら誰かオルガン奏者をつかまえなければならない。

 結城さんとしてはノートルダム・ド・パリ大聖堂でバッハの『トッカータとフーガ』でも収録できればという気持ちがあったようですが、何のツテもない状況下でしょう。しかもあの有名な教会で収録するなんて観光客を閉め出さなきゃなんない、交通関係のノイズだって大きいはずですからね。そりゃその場の思いつきでは無理ですよ。しかも、あそこはカトリックだからプロテスタント作品の『トッカータとフーガ』を果たしてやらせてくれるのか、オルガニストはどうするのか、そこら辺だって分からない。

 そもそもノートルダム・ド・パリと我々の間に何かコンタクトでもあれば話の糸口になるけれど、何もない状況でそういうことを言い出すもんだから、僕なんか情けなくなってきた。そういうことはアイデアを思い付いた人がコーディネーションしなければならないのですよ。

PCM録音した曲のプレイバックを聴くヘルムート・リリング

PCM録音した曲のプレイバックを聴くヘルムート・リリング 写真提供:コロムビアミュージックエンタテインメント

―― リリングはドイツのオルガン奏者ですね。

 幸いなことに、僕はリリングと日本で接触する機会があって打診はしていたんです。僕らは11月にパリで収録する計画があるんだけれど、それに近い時期でバッハのオルガン作品を録音できないだろうかという話をして、日程をもらっていました。それで2枚分作れたんです。

 今でこそ日本にもオルガンはいろんなホールにありますが、あの頃はまるでなかった。ミッション系の大学にはあっても、まともなもの、録音に使えるようなものは皆無でした。だからオルガンを録るんならヨーロッパでということは考えてましたけどね。

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