「タケダジャーナル」

官僚から「本当の話」を聞き出す方法

〜ミスター年金・長妻昭氏に聞く取材テクニック【前編】

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2007年10月22日(月)

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 今回はいつもと趣向を変えて、「ミスター年金」こと民主党議員・長妻昭氏へのインタビューをお届けしよう。

 テーマはあえて年金ではなく、ジャーナリズムについて、だ。

 実は長妻氏はかつて本連載の版元である日経BPに中途入社し、「日経ビジネス」誌で記者を務めている。その後、政治の世界に転出し、1995年の参議院選挙に評論家の大前研一氏が設立した「平成維新の会」公認で出馬。この最初の挑戦は実らなかったが、その後、新党さきがけを経て旧・民主党結党に参加。2000年6月の衆議院議員総選挙において東京都第7区から出馬し、自民現職の粕谷茂氏を破って初当選を果たした。

 そんな長妻氏にジャーナリズムの話を聞くのは、「日経ビジネス」記者時代の仕事ぶりを当時の同僚から伝え聞いているからだ。

 人生経験のつもりか、コネ作りのためなのか、政治家になる前のキャリアとして一度、報道の仕事に携わる「元ジャーナリスト」は多いが、長妻氏の場合は、政界進出への腰掛けとしてジャーナリズムを片手間にやっていたのでない。ジャーナリストとして最前線で活動を経験して政治を志した希少なケースである。

 そして最近の国会議員としての活躍も、その丁寧な調査志向はジャーナリストに通じる印象がある。そんな長妻氏に、政治家になってからの経験を踏まえて改めてジャーナリズムを語ってもらう。それがジャーナリズムの輪廓を確かなものにするのではないか。そして、それは実は消えた年金問題の根深さをも明らかにするのではないか。

 取材は安倍前首相の突発的辞任に続く自民総裁選で国会が活動休止していた9月26日、永田町の第二議員会館の長妻氏のオフィスで行われた。

*  *  *  *

武田 長妻さんを見ていると、政治家になった今でも、やっていることはジャーナリストだと思うんですよね。自分で埋もれている事実を調べ、国会で質問して、事実の背景にあった真相を明らかにしてゆく…。

長妻昭・民主党衆院議員

長妻昭・民主党衆院議員

長妻 確かに調べ方自体は記者時代から全く変わってないですね。雑誌記者をやってつくづくよかったと思うのは、調べ方のいろはの「い」から教えてもらったこと。

武田 どうやって調べるんですか。

長妻 「日経テレコン」で新聞を全部検索して、あと関係資料をあらいざらい読む。それを1週間ぐらいでどわーっとやりながら自分なりにワープロで要点を打ってメモを作ってゆく。すると、それだけでたぶんその道で日本で10番目ぐらい…は大げさかな(笑)、まあ、日本で100番目ぐらいの専門家になっちゃうでしょう。それが基礎知識で、そこからあとは現場の、一番先端にいる人に取材をして「直接」話を聞く。これをやると、メモした話と全然逆のことを聞かされたりしてびっくりする(笑)。そういう調べ方は記者時代に教えてもらったもので、これは今も同じです。

武田 国会質問や、問題追及の姿勢からうかがい知れる印象の通りですね。そもそもジャーナリストってそういうものじゃないかと思っているんです。新聞社とか雑誌社に所属しているか、で決まるのではなく、生き方として定義されるジャーナリズムというのがあるんじゃないかと。

長妻 ジャーナリズムって「ジャーナル」からきているんでしょう。あれ何なの? 記録とかの意味?

武田 ローマ時代の「官報」に「日々の」という意味のディウルヌスという古代ラテン語が使われて、それが最初だとは言われていますね。そのディウルヌスがジャーナルと言うと語になるんだけど、これだと「日記」ですよね。で、ジャーナリズムは日記主義(笑)。

 …というのは、ちょっとおかしいけれど、日々の記録をつけるということでしょうか。これはアウトプット側の規定ですね。一方でインプット側の、調査するマインドというか、そういうものもあって、要するに真相を究明するために日々調査をしていれば、その人はもうジャーナリストなのではないかと。そんな生き方としてのジャーナリストという意味で長妻さんのスタイルに興味がわきます。ちなみに雑誌記者になる前はサラリーマン経験があったのでしたよね。

長妻 NECのサラリーマンをやっていましたね。ちょうど私がコンピューターの営業をやっている時にバブルの全盛期でした。これがね、ある日突然、面白いように売れるようになったんですよ。

武田 そんな感じの時期がありましたね。

政治家に取材して、考えが変わった

長妻 そういう時に日経新聞を読むのが実に楽しくなったんですよ。だって「人口も増えてない、みんなの仕事の勤務時間も同じなのに、何でいきなりコンピューターを買うようなお金持ちが増えるのか」。考えてみれば不思議ですよね。そういうことに興味を持って日経新聞を愛読し、隅から隅まで読んで。そうすると、もうちょっと世の中を鳥瞰したいというか、上から見たい気持ちが募ってきた。

武田徹

武田徹

武田 なるほど、鳥の目で見たくなったと。

長妻 NECもやりがいはあったんですけれども、会社員はやはり個々の持ち場で仕事をしている。もう少し離れてみたら、世の中どう見えるのだろうと思ったんですね。日本全体が知らない間にすごい状態になっている。この真相は何なんだと思って日経を読んでいたのですが、ある時にたまたま新聞に雑誌記者の募集広告が出ていたので、それで応募しました。

武田 実際に仕事を始めていかがでした。

長妻 鳥の目で見られる面白さは予想通りでした。それから名刺一枚で誰にでも会える。これは初めからマスコミに入っている人は当たり前かもしれないけど、外から来るとびっくりする。普通の営業マンだったら部長に会うだけでもいろいろ段取りを整えないといけなくて大変ですよ。ところが、記者の名刺を持って取材に行くと社長がいきなり出てくる。ナマでキーマンに直接話が聞ける。これは、本当に日本という国を動かしている真相を知ることができるんじゃないかと期待しましたね。

武田 長妻さんの昔の同僚の方が知り合いに多いので、記者時代の長妻さんは実に充実した仕事ぶりだったという話を聞いています。それがどうして政治家志望に?

長妻 記者がいやになったのではなくて、記者をやっていたからこそなんですよ。

 記者として取材していると、今まで政治家が偉い人の集団だと思っていたのが、実像が見えますよね。すると、これは、かなりマズいわけです。

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著者プロフィール

武田 徹(たけだ・とおる)

武田 徹氏

ジャーナリスト・評論家。恵泉女学園大学人文学部教授。『流行人類学クロニクル』(日経BP社)でサントリー学芸賞受賞。その他、『「核」論』『偽満州国論』『「隔離」という病い』(中公文庫)、『NHK問題』『戦争報道』(ちくま新書)ほか著書多数。 東京大学先端科学技術研究センター特任教授として2003-7年にジャーナリスト養成コースを運営。(写真:都築 雅人)



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インターネット、デジタルカメラ、ブログ、SNS…。情報発信の術を個人が手にした現在、ジャーナリズムの姿は否応なく変化している。それは、ネットを利用する個人が、半ば強制的に「ジャーナリズム」に巻き込まれるということだ。時代を泳ぎ切るには受け手として「メディアリテラシー」を備えるだけでは足りない。誰もが送り手になりうる状況を踏まえて、新しい時代にふわしいジャーナリズムの作法を知っておく必要がある。武田徹の「万人のためのネットジャーナリスト講座」、ここに開幕。

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