• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

シューマンの楽譜の謎を解く楽しさ

20年かけ、ソロ・ピアノ作品の全曲録音を完成

  • 伊熊 よし子

バックナンバー

2007年10月22日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ピアニストの伊藤恵さんが、20年の歳月をかけてシューマンのソロ・ピアノ作品の全曲録音シリーズ「シューマニアーナ」を完成させた。1987年に第1回目の録音がスタートし、今春の最終録音で全13枚を数える。この全曲録音は、世界的にも数例のみという貴重なもので、伊藤恵さんのピアニストとしての20年余年の歩みを映し出している。

シューマンの楽譜の謎解きをし、作品の全体像を理解する楽しさを語る伊藤恵さん (撮影:小川玲子、以下同)

シューマンの楽譜の謎解きをし、作品の全体像を理解する楽しさを語る伊藤恵さん (撮影:小川玲子、以下同)

 伊藤恵さんとシューマンとの出会いは1986 年。レコード会社のフォンテックが企画した教育用のカセットテープの録音だった。当時、フォンテックは創立14、15年の若い会社で、1人の音楽家の活動を追っていくという意欲に燃え、伊藤さんもデビューして間もなくだったためチャレンジ精神に満ちあふれていた。シューマンの録音は、こうした演奏家とレコード会社の前向きな気持ちが合致したことでスタートを切った。

 「今思えば不思議なことですが、1枚目の録音から、漠然と全曲を録音するという覚悟のようなものがありました。いつ完成するのか分からないのに、なんと大それた考えを抱いていたのでしょう(笑)。若さゆえの暴走というか、怖いもの知らずというか……」

 伊藤さんは、「暴走」という言葉を何度も口にした。初めてのレコーディングは作品に対する熱い思いが体の奥からこみ上げてきて、突っ走った。会場にはコンサートとは異なる緊張感が漂い、ぎりぎりまで追い詰められたような気持ちになったという。

 「ただ、ただシューマンの作品に近づきたい、シューマンの気持ちを理解したい、シューマンのすばらしさを表現したい、そう思ってピアノに向かっていました。最初のこの気持ちは20年たっても全く変わっていません。変わったのは、楽譜を深く読むことができるようになったということでしょうか」

様々な芸術や文化に触れ、音楽の幅が広がった

 楽譜を深く読む。音楽家はこの言葉をよく使う。さらに、楽譜の裏側に潜むものを理解したいと語る人が多い。それはいったいどういうことを指すのだろうか。

 「楽譜に書かれた音符をそのまま弾くということは、ある意味でとても簡単なことです。練習すればできることですし、難しい個所も必死でさらえば克服できます。ただし、それだけでは、聴衆の心に感動を届けることはできません。作曲家が一つひとつの音符で言いたかったこと、その作品で表現したかったことを真に理解し、それを自分の指で鍵盤に移し、深い表現力をもって演奏しなければなりません。そのためには作曲家の伝記を読んだり、その時代の文化や歴史なども知らなくてはならない。作曲家がどういう時期に、いかなる状況で作品を書いたかを知らずに、ただ音符だけを追ってひたすら練習ばかりしていたのでは、内容のない演奏になってしまいます。ヨーロッパに留学してから、この大切さに気づきました。私はミュンヘンとザルツブルクが拠点でしたが、美術館に行ったり、様々な芸術や文化に触れることで、音楽の幅が広がったと思います」

 留学時代の1983年にミュンヘン国際コンクールで日本人として初の優勝を遂げ、一躍名前が知られるところとなった。このコンクールは、第1位をなかなか出さない難関として知られる。そこで快挙を成し遂げ、人生が大きな変貌を遂げる。

 「昨日まで学生だったのに、一夜明けたら電話が鳴りっぱなし。コンサートの依頼が入り、街ではテレビで見たよ、と声をかけられる。驚きの連続でした」

感動が多ければ多いほど、人生は実り豊かなもになる

 やがて名匠として知られるヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場管弦楽団と共演、ミュンヘン・デビューを飾ることになった。

 「サヴァリッシュさんはピアノの名手としても知られています。リハーサルの時に、私が緊張してどこから弾いたらいいのか迷っていたら、指揮台から降りてきてピアノをサーっと弾き始めた。ワーッ、すごい、マエストロ、代わりに弾いてくださいっていう感じ(笑)。それほどすばらしかった」

コメント0

「音楽家訪問」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人は何か自信を持って誇れるものを持っているはずです。

為末 大 元プロ陸上選手